弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年10月11日

自衛隊の変貌と平和憲法

社会


(霧山昴)
著者 飯島 滋明、寺井 一弘ほか 、 出版  現代人文社

憲法尊重擁護義務のある首相や国会議員が、多くの国民が求めてもいないのに、憲法改正を声高に叫んでいる現状はあまりにも異常です。ところが、マスコミは何の問題もないかのように「政府発表」をたれ流すばかりです。それで、いつのまにか国民は安倍首相が何かというと憲法改正を唱えることに慣れて(慣らされて)しまいました。本当に危険な状況です。
しかも、憲法のどこか具体的に問題なのか明確にせず、自衛隊員が可哀想だからとか、憲法学者が自衛隊の存在を違憲だというから改正する必要があるなどと、心情論に訴えたり、責任転嫁したりして、まさしくずるい(こすからい)手法を使うばかりなのには呆れてしまいます。
どこにどんな問題点があるから、こう変える必要があるという点は、いつまでたっても具体的に明らかにはしないのです。まさしく国民だましの改憲あおりの手法です。
私が、この本でもっとも目を見張らせられたのは、宮古島などの沖縄・南西諸島への自衛隊配置が「日本防衛」のためではなく、アメリカの軍事戦略「エアシーバトル構想」の一環であり、「対中国封じ込め作戦」の一端をアメリカ軍の代わりに自衛隊が引き受けるものだという指摘でした。
自衛隊は、石垣島をめぐる攻防戦をシュミレートしている。石垣島に「敵」4500人が攻めてきたとき、自衛隊2000人のうち残存率30%まで戦闘を続け、奪還作戦部隊1800人が追加されると、自衛隊員は3800人のうち2901人が戦死するものの、奪還できるという。そして、「敵」は上陸してきた4500人のうち3801人が戦死する。
では、このとき。一般市民はどうなっているのか・・・。島は「捨て石」となり、住民の多くは犠牲になるだろう。まあ、それにしても「敵」が4500人だなんて、ありえないでしょう。
アメリカ軍は沖縄にも本土にも核ミサイル基地をつくる計画があると報道されました。辺野古の新基地も、そのためのアメリカ軍の拠点となるようです。日本がアメリカの「下駄の雪」のように、捨てられるまでどこまでもついていくという安倍政権の構想は絶対に許せません」。
安倍首相の率いる自民・公明連立政権は、アメリカの下でひたすら戦争への道を突っ走しているようで、心配です。
日本の現状、とりわけアメリカ軍と日本の自衛隊、そして日米安保条約とアメリカ軍基地の存在、そして安保法制について考えるときの具体的材料が満載のブックレットです。
ぜひ、あなたも手にとってご一読ください。
(2019年9月刊。1800円+税)

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