弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年10月10日

教育と愛国

社会


(霧山昴)
著者 斉加 尚代・毎日放送取材班 、 出版  岩波書店

若者たちの投票率が3割とか4割しかないというのは、現代日本において文科省の統制下にある学校教育の「成果」なのではないでしょうか。いえ、「成果」というのは、アベ首相の思う教育「改革」が効を奏しているという意味であって、子どもたちの自主性が押し殺されてしまっている、ひどい状況の結果だということです。子どもたちの自主的なの伸びのびとした動きを上から抑えつけているのは、身近な教員集団ですが、その教員集団が上からの指示・強制によって自由に伸びのびと子どもたちに接することができない弊害が、子どもたちの政治的無関心を助長しているのだと思います。残念でなりません。
政治的圧力に対する教職員の反応は、4:4:2。政治的公平性・中立性からみておかしいと正面から唱える人は2割しかいない。4割は、首長や議員の意向を忖度(そんたく)し、こびる。残る4割は、自分の持ち場に逃げ込んで問題に関わらないようにする。
小学2年生の「道徳」教科書。
①「おはようございます」と言いながら、おじぎをする。
②「おはようございます」と言ったあとで、おじぎをする。
③おじぎのあとで、「おはようございます」と言う。
この3問のうち、正解は②。
ええっ、ウ、ウソでしょ。こんなことを小学生に学校で教えるなんて、バカみたいでしょ・・・。信じられません。
「学び舎」の歴史教科書は、考える歴史に挑戦し、全国各地の灘や麻布といった難関進学校で教科書として選択された。すると、「反日教育」やめろという抗議ハガキが何百枚も殺到した。これに対して、かの有名な灘中・高の和田校長が冷静に反論した。
学校教育に対して有形無罪の圧力がかかっている。多様性を否定し、一つの考え方しか許されないという閉塞感の強い社会に現代日本はなってしまっているのか・・・。
それにしても、大阪の橋下徹、そして吉村洋文という2人の弁護士の言動はひどすぎます。この2人が司法試験で憲法の問題をクリアーしたというのは、まったく信じられません。
次の日本をになう子どもたちが伸びのび自由に、自分の頭で考えている環境をつくることこそ市長(知事)以下の行政の責任だと思いますが、この弁護士たちは子どもを自分の思うどおりに操れるロボットにしたて上げたいようです。政治家としても、人間としても失格ではないでしょうか・・・。
(2019年5月刊。1700円+税)

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