弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年9月 8日

ダイヴ・トゥ・バングラデシュ

バングラデシュ


(霧山昴)
著者 梶井 照陰 、 出版  リトルモア

私はインドにもバングラデシュにも行ったことがありません。バングラデシュというと、日本の大手衣料品メーカーが現地で安く縫製させて、日本で「高く」売りつけているというイメージです。
まずは表紙の写真に圧倒されてしまいます。夜の駅に無数としかいいようのない大群衆がホームにひしめいている写真です。ええっ、こんなにバングラデシュって、人口が多いのか・・・、と思わず息を呑みます。
著者は僧侶であると同時に写真家です。高野山で修業して真言宗の僧侶になり、世界各国を取材してまわっています。バングラデシュに2013年から2018年まで通って撮った写真が紹介されています。
2013年4月にバングラデシュ(ダッカ)で縫製工場の入っていたビルが崩落したときには死者1127人、負傷者2700人以上という大惨事でした。
低賃金で働かされる縫製工場に発注している世界的衣料メーカーは、GAP,H&M、ZARA、ユニクロなど、世界的ブランドのメーカーです。
線路のすぐ脇にまでスラム街が広がっています。スラム街の貧しさから抜け出すために、男は劣悪な環境の炭鉱で働き、女は売春婦になっていく・・・。いやはや、なんとも言いようのないほどの貧困と人々の多さです。しかし、そんななかでも原発建設の反対を訴えるデモ行進があったりもするのです。希望がないわけではありません。
まさしく、雑然、混沌とした世界が奥深く広がっているのがバングラデシュのようです。その一端を垣間見た思いがしました。
(2019年5月刊。2900円+税)

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