弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年8月31日

金剛の塔

日本史(戦国)


(霧山昴)
著者 木下 昌輝 、 出版  徳間書店

日本には、創業1400年の金剛組という会社があります。寺社建築の会社です。
各地の五重塔は戦災にあって消失したものの、その多くは再建されています。そして、大地震にも見事に耐え抜いてきました。
なぜ五重塔が倒れないかは、今もって完全に解明されてはいないそうです。知りませんでした。そして、寺社建築を手がける宮大工さんは独特の技術継承があります。そんなことを小説にして分かりやすく解き明かした歴史小説です。
宮大工に必要なことは、手先や才能よりも大切なのは、木を扱うことが好きだということ。それがなければ、どんなに手先が器用でも、つとまらない。
木を選ぶ。北の斜面に育った木は、ほとんど陽が差さない。おかげで、陽当たりが均等で、芯が中心にくる傾向が強い。陽当たりのいいところに育った木は中心が大きくずれている。木は太陽のあたる側が大きく成長するから。柱につかうと、当然に年月がたつにつれてゆがみが生まれる。
五重塔は、梃子(てこ)の原理で重い屋根を支えている。各層がスネークダンスと呼ばれる奇妙な動きで互いちがいに揺れ、それで地震の揺れを殺している。
しかし、どんなに研究がすすんでも分からないのは、心柱(しんばしら)だ。飛鳥時代に建築された法隆寺の五重塔は、震度5以上の地震に6回、震度6以上だと3回、あっているけれど、倒れなかった。なぜ心柱は存在するのか、それはどんな働きをしているのか、まだ仮説段階でしかなく、その仕組みは科学的に究明されていない。
すごいですね。そのことを歴史小説の形にして私たちに理解を迫ってくるのです・・・。
(2019年5月刊。1700円+税)

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