弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年8月18日

新しいチンパンジー学

人間・チンパンジー

(霧山昴)
著者 クレイグ・スタンフォード 、 出版  青土社

人間とチンパンジーは、どれほど違う存在なのか・・・。この本を読むと、人間はチンパンジーによく似ていることがしっかり分かります。
アルファオスの平均在位期間は4年間。アルファオスであっても、必ずしも大部分のメスと交尾できたり、ほとんどの子どもの父親になれるというものではない。
ただし、アルファオスになったことのあるオスは、他のチンパンジーよりも平均33.4歳と長生きした。他のオスは25.5歳だった。
高順位メスは、娘よりも息子の育児により時間をかけ、結果としてオスの幼児期生存率を高めている。
メスのチンパンジーは、11歳前後で性皮腫脹を経験する。おとなオスはすぐにそのメスを違った目で見るようになり、交尾が始まる。メスは、たいてい1年か2年のうちに生まれたコミュニティを出ていく。そして、13歳ころに別のコミュニティに落ち着き、残りの一生を過ごす。メスは死ぬまで、5年間隔で出産を続け、閉経を迎えることはない。
性皮腫脹期間のメスは、きわめて性的に活発で、1時間に3.5回の交尾をする。あるメスは、1日のうちの11時間に、異なる18頭のオスを相手に、65回も交尾した。10分に1回の計算だ。
すべての交尾行動のうち、4分の1はメスが開始し、オスはその80%がメスの誘いに応じた。
チンパンジーのオスは、若いメスよりも年長の雌を好む。経産メスのなかでも、若い母親より年とった母親が好まれる。なぜか・・・。高齢のメスは、若いメスよりも順位の高いことが多く、繁殖成功度も高いからではないか・・・。
チンパンジーの母親にとって出産はそれほど大仕事ではない。チンパンジーの新生児の頭蓋骨はヒトの新生児の3分の1の大きさしかない。
チンパンジーの幼子は、母親が死ぬと孤立無援の状態に陥ってしまう。野生では、チンパンジーの出生時の平均余命はわずか15~19歳でしかない。しかし、性成熟まで生きのびると、そこからさらに平均で15~24年は生きる。野生チンパンジーが老衰で死ぬことは、ほとんどない。病気のため、またヒョウに襲われて死んでしまう。
読めば読むほど、チンパンジーの世界は人間そっくりなのです。
(2019年3月刊。2600円+税)

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