弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年8月11日

老人ホーム、リアルな暮らし

社会


(霧山昴)
著者 小嶋 勝利 、 出版  祥伝社新書

現在、老人ホーム業界は、M&A真っ盛り。売りたい老人ホームがたくさんあり、それと同じくらい買いたい老人ホームがある。売りたい老人ホームの経営者は、今なら、まだ価値があるので、今のうちに売りたいと考えている。
買いたい老人ホームの経営者は、とにかく規模を大きくしないと利益が出ないので、お金のある限り買いまくり、規模を大きくしていくことを最優先にしている。
介護職員の不足は深刻な問題になっている。介護職員が足りない根本的な理由は、割にあわない仕事だということ。
老人ホームの朝食時間は、8時ころから9時ころまでに設定されている。それは、早番の職員の勤務シフトにもとづく。
老人ホームの食堂での席は、あらかじめ決められている。老人ホームの職員にとって、食事時間は戦争だ。
15時からはレクレーションの時間となるが、多くの職員はレクレーションが苦手。それは、盛り上がらないから。
夕食は午後6時から、入浴は週2回。お風呂が週2回というのは警察の留置所や拘置所と同じです。そして、共通しているのは、どちらも夜ではなく、昼間ということです。
老人ホームは、「動物園」と同じようなものだと著者は言い切ります。
生活への安全と安心が保証されていて、日々の食事について心配することもない。
ただし、何も考えずに老人ホームのなかで生活していると、「喜怒哀楽」から遠ざかる環境で暮らしていることになるので、認知症になりやすい・・・。
介護施設で働いている職員は、みな「負け組」。
いずれ私もお世話になるかもしれない老人ホームの寒々とした実情に心が震え、おののいてしましました。せめて、当面、介護職員の待遇改善、そして老健施設への手厚い保護が必要だと思ったことでした。
(2019年3月刊。820円+税)

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