弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年8月 8日

なぜ人は騙されるのか

社会・人間

(霧山昴)
著者 岡本 真一郎 、 出版  中公新書

「振り込め詐欺」と、それに類似した詐欺にひっかかる人が後を絶ちません。
人類の情報処理の基本設定(デフォルト)は、自動的処理。つまり、考えることなく、自動的に処理されている。不都合が起きたときだけ、制御的処理のシステムが積極的に介入して認知を修正している。
感謝先行型の表現の貼り紙「いつもご清潔にご使用いただき、ありがとうございます」のほうが、「清潔に使用しましょう」というより、印象が断然いいし、それに従おうという気持ちも強くなる。
話し方の印象がいいと、説得力は高くなる。
このようなことは滅多にないということ自体が疑いを弱めることにつながる。免疫のない出来事は説得されやすい。
特殊詐欺の被害者のなかに、繰り返して被害にあう人もいる。
ものすごくよく出来た台本があり、そこからひっぱり出してくるのです。
学習性無力感というコトバがあるそうです。今の世のなかにぴったりのコトバですよね・・・。
本書の後半では安倍首相のウソと詭弁を見事に論証しています。
先日の参院選でも、堂々と憲法に自衛隊を書き込んでも何も変わらない、なんてとんでもない嘘を繰り返していました。
「私も妻も一切関係がない。私や妻が関係していたことになれば、間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」(2017年2月17日、衆議院)。
ところが、あとになって、この「関わり」というのを「贈収賄に関すること」だと安倍首相は言い換えて、責任のがれを図りました。とんでないごまかし答弁です。安倍首相は直ちに国会議員であるのを恥じて、辞任すべきなのです。
こんな首相が堂々と開き直って居座っている姿は、日本の子どもたちにどうしようもないという無気力感を植えつけていると思います。
それにしても、投票率が5割に達しないというのは日本の民主主義の危機です。あきらめてはけないのですけどね・・・。
(2019年5月刊。820円+税)

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