弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年6月 8日

言葉の国、イランと私

イラン

(霧山昴)
著者 岡田 恵美子 、 出版  平凡社

イランという国は、私にとってまったくなじみのない国です。この本を読んで、少しだけ国と人々のイメージをつかむことができました。
著者は1932年生まれですから、今や86歳。26歳のときにイランの言葉に魅かれて当時の国王に手紙を出したところ、その目にとまって国費留学生としてイランに渡って勉強しました。実に勇敢な女性です。
イランとは、アーリアを意味する。ペルシアは、かつて力を持った一地方の名。
イランの中東一の核開発力をもつ国。イランは原油・天然ガスの産出は世界第2位。国土は日本のほぼ4倍。海に面した部分もあり、北部では農産物を豊富に産出している。
イラン人の誇る美徳は、寛容・勇気そして雄弁。古くからさまざま人々と交流してきたイランでは、弁舌は大切な能力なのだ。
イラン人の泣きところは、我慢強くないこと。
ペルシア語でも、書き言葉と話し言葉では、文章の語尾や単語の発音が微妙に違う。
イランで女性に選挙権が認められたのは、1963年のこと。
イランでは、「おまえのおやじは火葬された、というのは最大級に罵倒する言葉。
死者は一般に土葬にする。なぜなら、人は死後、土中に横たわり、最後の審判を受けるときに起き上がって真の審判を受ける。火葬にされたら、審判を受けるとき、魂が入る身体がないことになるから。
食事に招待するのは、普通、昼食。夜の食事は、ごく軽い。
イラン人は暗記の得意な国民である。
イランでは離婚が多く、「バツイチ」などという言葉はない。
イラン人はプライドの高い国民である。自分の置かれた地位にプライドを持っている。性別や年齢、職業、学歴などによるコンプレックスを持たない。
イラン人にとって、自然とは戦う相手。だから人工こそ安心できる空間。シンメトリーな構図の庭でこそイラン人は安心して憩える。
イラン人は教訓、箴言(しんげん)の好きな国民だ。
心は憎しみを生まない。憎しみを生むのはいつも言葉だ。知は力なり。知によって老いの心も若返る。
心から心へは道がある。
イラン人のイメージがつかめた気にさせる本でした。
(2019年3月刊。2500円+税)

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