弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年3月29日

日本の「中国人」社会

社会・中国


(霧山昴)
著者 中島 恵 、 出版  日経プレミアシリーズ

中国人の旅行客をよく見かけます。春節のころは、とくに目立ちました。大型客船(クルーズ)からの団体旅行の人たちというより、家族連れが多かった気がします。
日本の景気は彼らの「爆買い」にかなり支えられていますよね。天神や川端の商店街のあちこちにドラッグストアーが乱立していて、大丈夫なのかしらんと余計な心配をしています。
この本を読むと、今や100万人近くの中国人が日本に住んでいるそうです。そして、タワーマンションの最上階を自宅用として中国人が買っているとのこと。上海のマンションより安いから買っているそうで、単なる転売・投資(投機)目的ではないようです。
そして、中国人といっても、広い中国ですから、実は言葉も習慣も民族までも大いに違うのですから、トラブル発生は必至です。
埼玉県川口市の芝園団地は、中国人がもっとも多い団地。4500人の住民のうち2300人が中国人。横浜市立南吉田小学校は、全校児童740人のうち、中国人が307人を占める。4割だ。この学校では、休み時間は何語を話しても自由、にしている。
東京都内には20万人の中国人が暮らしている。
日系ブラジル人の多い愛知県豊田市の保見団地。インド人が多い横浜市の霧が丘グリーンタウン。多国籍の人が多い横浜市の公営住宅いちょう団地。
富裕層の中国人が、自宅用としてタワーマンションを購入している。最上階は「風水がいい」として好まれる。
北京や上海では、富裕層、中間層、低所得者層は、それぞれ住居エリアが分かれている。中国では、いい学校がある地区にあるマンションを「学区房」と呼ぶ。いい学校とは、政府が資金を重点的に投入していて、「重点校」と呼ばれる。多くの人が重点校に子どもを入れようとするため、その学区の不動産は異常なほど値上がりする。中国ではマンション価格が高騰していて買えないけれど、日本でなら、自分の家が手頃な価格で買える。
日本には中国系企業が316社あり、アメリカ・ドイツに次いで3番目だ(2016年)。とくにサービス業の増加が顕著だ。
那三届(ナーサンジェ)とは、1978年から3年間に大学に入った人たちのこと。文化大革命が終って、とくに競争が激しかったので、「那三届」世代は一目置かれている。
「老三届」は、文化大革命が始まった1966年から68年に高校生だった人をさし、不運な時代を意味している。
私は1967年(昭和42年)に大学生になりましたので、この不運な「老三届」世代になります。でも、中国とちがって、大学には(途中、長いストライキもありましたが・・・)ずっと通えました。
中国にいる日本人は、12万4千人。在日中国人の6分の1でしかない。中国の10都市に11校の日本人学校がある。
中国では、魅力的な投資先がなかなか見つからない。すでに中国への投資をし終えたので、日本に目が向いている。とにかく、余剰資金があるので、日本企業に投資し、技術を買いたい。何でもいいので、お金を使いたい。そんな相談が多く寄せられている。
うひゃあ・・・、そ、そうだったんですか・・・。すごいことですよね、これって・・・。日本と中国の密接な関係を再認識させられました。それでも、「中国」の軍事的脅威なるものを真面目に心配している日本人が少なくないのが、私は信じられません。
(2019年1月刊。850円+税)

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