弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年3月26日

イスラエルがすごい

イスラエル


(霧山昴)
著者 熊谷 徹 、 出版  新潮新書

イスラエルがシリコンバレーに匹敵するIT先進国だというのを初めて知りました。
私にとって、イスラエルというのはアラブ諸国と絶えず戦争をしていて、ときにはテロで狙われる物騒な国というイメージです。ところが、この本によると、意外に平和な雰囲気の国のようです。
今日、イスラエルは、アメリカのシリコンバレーに次いで、世界で2番目に重要なイノベーション拠点だ。
2017年3月、アメリカの巨大IT企業インテルがイスラエルの自動車関連ハイテク企業モービルアイを買収した。この買収金額は、何と153億ドル、日本円で1兆6830億円といいますから、とてつもない巨額な買い物です。
インテルは年間売上高は594億ドル(6兆5040億円)、従業員は10万6千人。モービルアイは3億5800万ドル(394億円)の売上で、従業員は750人しかいない。しかし、モービルアイは車の自動運転に不可欠のテクノロジーについて世界的リーダーの地位を占めている。モービルアイのカメラとセンサーは、自動運転の目だ。モービルアイの技術なしには、衝突防止や自動運転車の研究・開発は進まない。モービルアイの技術は、すでに世界中の1500万台の車につかわれている。
サイバー・セキュリティはイスラエルの得意分野の一つだ。「ファイアーウォール」の技術はイスラエルで生まれた。
イスラエルのテルアビブは、不動産ブームによって家賃が高騰している。
イスラエルの出生率は3,1(2015年)で、日本やドイツ、EUの2倍だ。
ヨーロッパに住む人の出張先としてイスラエルは人気がある。その理由の一つは、温暖な気候。また、豊かな食生活とグルメの集まるレストランがたくさんあること。
日本よりもテロや戦争の危険は高い国だが・・・。そして、イスラエル人は起業家精神が旺盛だ。
ナスダックに上場しているイスラエル企業は97社。中国の159社に次いで多い。日本はわずか12社でしかなく、ドイツだって10社だ。
イスラエル国防軍にはいって兵役に就いているときに学んだ技術を民間経済のために活かしている人がとても多い。軍隊がベンチャー企業家の「養成校」となっている。軍隊の8200部隊は、イスラエル国防軍きっての超エリート部隊だ。
テロリストがヒトを殺すため、車をハッキングして事故を起こす危険がある。つまり、交通事故と見せかけた殺人が可能になる。ノートブック型コンピューターから自動車のシステムに入りこみ、走行中の車に急ブレーキをかけたり、窓を開けしめするので、事故発生を操作することができる。
ええっ、車が殺人マシーンに化すのですか・・・、恐ろしいことです。
ノーベル賞を受賞したイスラエル人は人口比で多い。科学関連で8人もいる。ドイツ91人、日本5人、・・・。
イスラエルは、中国との関係を緊密化しつつある。イスラエルは中国による一帯一路にも参加している。
中国の資金とイスラエルのイノベーション力、ドイツのテクノロジーが結合すると、世界にとって手ごわい相手となるだろう。日本はイスラエル進出の点で、明らかに出遅れている。
イスラエルの違った一面を知ることができる本です。
(2018年11月刊。780円+税

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