弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年3月13日

まなざしが出会う場所へ

社会

(霧山昴)
著者 渋谷 敦志 、 出版  新泉社

一瞬、目をそむけたくなる写真があります。でも、現実から逃げるわけにはいきません。この一瞬にも、世界中に戦争が絶え間なく、飢えで死んでいく子どもたち、病気にかかっても十分な治療をうけられずに亡くなる人々がいます。そして、なんと多いことか・・・。
いま、日本の首相は国会も含めて、あちこちで、ウソを高言して、はばかりません。あたかも世界と日本の平和を守るために安保法制法がすぐにも必要だと言っていましたが、安保法が成立しても悪いほうに事態が動いているだけではありませんか。トランプに押しつけられたアメリカの高額兵器の爆買いなんて、とんでもありません。そのうえトランプがノーベル平和賞をもらえるようアベ首相が推薦しただなんて、まさに白昼に悪夢を見ている思いです。
著者は高校2年生、17歳のとき写真家になると決意したとのこと。それから26年たっています。本当に写真家になってしまったのです。その苦難の歩みを撮った写真とともに紹介している本です。
著者は大学生のとき、ブラジルに留学し、サンパウロにある日系の法律事務所に研修生として入った。そして、30日間のブラジル縦断の旅に出た。日本に戻ったあと、今度はアメリカはサンフランシスコでソーシャルワークの仕事をはじめる。
日本に帰ってからは大阪の釜ヶ崎に入りこんだ。1泊600円の個室。3畳1間に布団一枚。掛け布団はじめっとして重く、かぶるのをためらうほど黄ばんでいる。
大学を出て、国境なき医師団の随行カメラマンとしてアフリカに渡る。
外は10分も歩くと息苦しくなる暑さで、水をいくら飲んでも小便が出ない。
アンゴラ難民。極度にタンパク質が不足すると、お腹が膨らみ、手足が腫れる。外から入る栄養がないので、体が自分の体を食べて破壊している。ここまで重症化すると、「はいどうぞ」と食事を与えたら、助かるというより、逆に命とりになる。長時間の飢餓状態によって体内の消化機能は壊され、食事を受けつけない身体になっているから。免疫システムも十分に働いていないため、簡単に感染症を引き起こし、途端に重症化するリスクもかかえている。そして、もし治療がうまくいったとしても、なんらかの障害が残って成長の妨げになる可能性が高い。
写真家として食べていけるというのは至難のことだと思います。居酒屋でのアルバイトで食いつないでいたこともあるといいます。
それでも写真の訴求力というのは大きいですよね。想像力を大いに刺激します。こんな大切な仕事をすでに26年間もしてこられたことに、私は著者に対して心から敬意を表します。
買って読むべき本だと思います。ぜひあなたも手にとってみてください。世界各地の重たい現実の一端に触れることができます。
(2019年1月刊。2000円+税)

 3月も半ばとなり、すっかり春めいてきました。わが家の庭に、例年どおり土筆が可愛い顔をのぞかせ、チューリップも咲きはじめて、300本のチューリップが咲きそろうのも間近となりました。2月に始まった花粉症はこのところ少し落ち着いていて、夜はぐっすり眠れます。ところが、なんと坐骨神経痛に悩まされています。右のお尻から膝下までピリピリ痛いのです。しばらくすると嘘のようにおさまるので助かりますが、脊柱管狭窄症ではないかと私を脅す人もいたり、要するに華麗なる加齢現象だと言う人がいて、年齢(とし)はとりたくないものです。

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