弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年2月27日

自衛官の使命と苦悩

社会

(霧山昴)
著者 渡辺 隆・山本 洋・林 吉永 、 出版  かもがわ出版

私の依頼者に自衛官は何人もいましたし、大災害救助のときの自衛隊出動には心から敬意を表しています。警察でも消防でもまかなえない役割を果たしている点は高く評価します。でも、自衛隊がイラクやソマリアに行き、ジブチに基地をつくっているのには賛成できません。幸いにして、これまで日本人が殺されることもなく、現地の人々を殺したこともないというのは、本当に良かったと思います。でも、戦闘に巻き込まれるような危険な役割をアメリカ軍と一緒になってやるなんて、無益であり、有害だと思います。
安倍首相は憲法改正の理由として、自衛隊員に肩身の狭い思いをさせてはいけないからと言っていましたが、災害救助でがんばっている自衛隊員を日本人の多くは高く評価していると思います。次に、地方自治体の6割が自衛隊員の募集を拒否しているとか言い出しました。まったく事実に反します。自治体のほとんどは、自衛隊員の募集に協力しています(私は、これがいいことだとは考えていません)。
この本は、現代日本の苦悩(矛盾)の産物である自衛隊について、その高級幹部だった人が語った本です。
どうすれば戦争にならないのか、侵略があったとき、日本はどう立ち向かうのか、正面からきちんと考えるべきだと柳澤協二氏は解説しています。
なるほど、そのとおりだと思います。
 それにしても、イージスアショアという2千億円もの軍事予算をつかうかどうかの国会質疑のとき、安倍首相が自衛隊員が自宅から通勤できるところにつくると答弁したのには思わず腰を抜かしました。米朝会談がすすんでいるときに、そもそもイージスアショアなんて不要だと私は考えていますが、それにしても自衛隊員の通勤圏内に「基地」をつくるという首相答弁は許せません。2千億円ものムダづかいは絶対に認められないことです。そんなお金があったら、大学生の奨学金(給付型)を拡充してください。介護保険料の徴収をやめて、年金を増額してください。
 自衛隊の高級幹部のナマの声に耳を傾ける意義はある、しかも大きいと痛感させられる本です。
(2019年1月刊。1700円+税)

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