弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2018年12月31日
佐賀藩アームストロング砲
日本史(江戸)
(霧山昴)
著者 武雄 淳 、 出版 佐賀新聞社
佐賀に行き、維新博なるものを見学してきました。幕末のころ、佐賀は弘道館をつくり、人材を育成・輩出したこと、反射炉をつくってアームストロング砲をイギリスから輸入したばかりでなく自分でも製造し、活用していたというのです。
明治10年の西南戦争で田原坂が最激戦地となったのは、重いアームストロング砲を馬と人力で引き上げるには、この道しかなかったからだということのようです。上野の彰義隊も佐賀藩のアームストロング砲の前に壊滅したとされています。
いったい、なぜアームストロング砲は、それほど威力があったのか、ぜひ知りたいと思って本書を購入し、認識を深めました。
アームストロング砲は、イギリスのアームストロングにより1855年に発明されたもの。それまでの青銅鋳物(いもの)製ではなく、鉄製砲身をもち、砲尾より装弾ができる。しかも、砲身は錬鉄の4層構造。後装式施条砲は、この当時の最新鋭の兵器で、射程距離、射撃精度、そして連射性で際立った性能を有している。アメリカの南北戦争、日本の戊辰(ぼしん)戦争でフルに活用された。
アームストロング砲は、1分間に2発ないし3発と連射性があり、最長3600メートルの射程距離があった。錬鉄による層威砲身なので、砲身の強度が確保された。錬鉄の細長い棒をつくり、それを加熱して芯金に巻きつけ、コイル状にしたものから鍛造加工で筒状にした。そして径の異なる筒を焼バメして層を重ねて、砲身の強度を確保した。
佐賀藩は、アームストロング砲を完全に自前ではつくれなかったようです。というのも、佐賀藩のつくった反射炉に錬鉄をつくる性能はあっても、錬鉄をつくるパドル炉の機能がなかったからです。したがって、アームストロング砲に似せたものまでつくって明治になってしまったのではないかと著者は書いています。
それにしても、佐賀藩だけが当時、鉄製大砲をつくっていたのですね。知りませんでした。
佐賀藩は鉄製大砲を200門をつくっただろうというのです。
かの白虎隊が奮戦した会津戦争でもアームストロング砲が活用されたとのことです。
初代の司法郷として近代的な裁判制度をつくろうとした江藤新平については、もっと知りたいと考えています。今後の課題です。
(2018年2月刊。1800円+税)
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