弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年12月22日

プロ弁護士の「勝つ技法」

司法

(霧山昴)
著者 矢部 正秋 、 出版  PHP新書

弁護士経験は十分だが、世間知が足りない。
なんだか、ドキッとさせられる言葉ですよね、これって・・・。
フランスのラ・ロシュフーコーは、太陽と死は見つめることができないと喝破した。
弁護士にとっては、太陽とマイナス情報は見つめることができないと言い換えられるかもしれない。たしかに、マイナス情報は見たくないものです。でも、マイナス情報こそ、貴重な視点を提供するものである。
世の中にウソは多く、真実はわずか。ウソは一人歩きする。その場限りにとどまらず、後を引く。
いま、国会で、官庁で、ウソがはびこり、堂々とまかり通っています。そんな大人の「見本」が子どもたちへの道徳教育の押しつけに熱心なのですから、まるでアベコベです。
民事裁判において、事実とは、自分の視点から切り取った事実にすぎない。そんな事実を主張するだけでは、裁判に勝てない。相手も、こちらと同じように彼らのストーリーを仕立ててくる。それを論破しなければいけない。そのためには、相手の視点を理解することが必要になる。
観察と分析によって、人となりを判断する。そのとき目つきは大事。目つきの悪い人は性格もよくない。目つきにケンがある人は、ストレス漬けが疑われる。目が笑わない人は、サイコパスの疑いが濃厚。目が座っている人は、本当に危ない。相手をののしるような人は隠れた劣等感の持ち主である。
相手を知りたいときは、ジョークをいって笑いを誘い、反応を見る。笑ったときには心が見える。素のままの自分を出せるか、それとも隠すか。そこに本性が出る。
相手を観察し、三類型(赤・黄・青信号)に分け、類型に応じた距離をとる。
仕事にとりかかるときは見通しを立て、仕事が終わったら見直しをする。
未来は思考力によって決まる。未来はやって来ない。未来は創り出すものである。
著者のビジネス書は体験に裏づけられていますので、いつも感嘆しながら読みすすめています。
(2018年10月刊。900円+税)

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