弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年12月 9日

懲戒解雇

社会

(霧山昴)
著者 高杉 良 、 出版  文春文庫

今から40年も前の小説ですが、まったく色あせしていません。企業小説のベスト・オブ・ベストとオビに書かれていますが、オーバーではありません。山崎豊子の「沈まぬ太陽」を読んだときにも思いましたが、大企業の内部での人事抗争の激しさは想像を絶しますね。つくづく民間企業に入らなくて良かったと思いました。
モデルがいる企業小説で、あとがきでは、その後の人生展開も紹介されています。
技術系の課長職にあるエリート社員が懲戒解雇されそうになり、逆に会社を相手として地位保全の仮処分申請をするという前代未聞の出来事が起きたのでした。丹念に取材して、うまく小説に構成されていますので、感情移入できて歯がみする思いで読みふけることができます。
社内には、次か、次の次には自分が社長だと自信満々の野心家がいるものです。そして、目的のためには手段を選ばないところから、社内で反発を買い、結局のところ、野心に駆られて強行した懲戒解雇に失敗するどころか、社長になる前に寂しく去らざるをえなくなります。そして、問題のエリート社員は会社を去らざるをえなくなりましたが、インドネシアで大活躍したのでした。
会社のなかでも筋を通す人はいるし、そんな人にエールを送る人も少なくはないのですね。文科省の元事務次官だった前川喜平氏をつい建想しました。近く福岡にも佐賀にも来て講演されるようです。憲法と教育の関係など、いま考えるべき課題をはっきり示していただけそうです。聞き逃さないようにしましょう。
(2018年6月刊。800円+税)

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