弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年11月24日

ナポレオン

フランス


(霧山昴)
著者 杉本 淑彦 、 出版  岩波新書

ナポレオンが皇帝になったあと、なぜ次々に周囲の国々へ戦争を仕掛けていったのか、この本を読んで初めて理解できました。
国内体制を固めたナポレオンは、対外戦争にのめりこんでいった。海ではイギリス上陸作戦が計画され、英仏海峡にのぞむブーローニュに一大軍事基地が建設された。陸では、総勢50万人に及ぶ大陸軍の編成が企画された。徴兵制度が整備・拡大され兵員適齢男性の30%が軍務に就いた。
ナポレオンを戦争に駆り立した動機の一つは、軍備増強に起因する財政負担の重荷だった。戦争に勝てば、占領地に巨額の賠償金や税金を課すことができる。戦争への備えが、戦争をもたらした。
ナポレオンがロシアへ侵攻していったのは、ロシアに占領地を得て、賠償金をもぎとることが大きな目的だった。しかし、その目論見ははずれ、冬将軍の下で退却するナポレオン軍をロシア軍が追撃してきた。ついに、ナポレオン軍がロシア領から無事に帰還できたのは、1割の3万人にみたなかった。
ナポレオンのアフリカ遠征は、結果としては失敗、敗退したにもかかわらず、当時の新聞等への報告をうまく操作して、フランス軍が連勝していたかのような幻想をフランス本国に与え続けていた。その意味で、ナポレオンのマスコミ操作術は見事としか言いようがない。
その結果、フランス国民はあたかも救世主かのようにナポレオンを熱狂的に迎え入れた。
ナポレオンがセント・ヘレナ島で死んだのは享年51歳のとき。その死因は、胃がんが現在では最有力。
ナポレオンについて、改めて深く認識することができました。
(2018年2月刊。840円+税)

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