弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年11月 1日

縄文美術館

日本史(古代)

(霧山昴)
著者 小川 忠博、小野 正文、堤 隆 、 出版  平凡社

縄文文化をしっかり見届けることのできる見事な写真集です。いま東京で縄文美術が展示されているようですが、なかなか行けません。仕方なく、この本を手にとって眺めることにしました。写真とあわせて解説も行き届いていて、とても分かりやすい本です。
フリーカメラマンの小川忠博氏は、35年ほども縄文時代の遺物を撮り続けてきたといいます。その圧倒的蓄積が、この写真集に見事に結実しています。
縄文時代とは、1万6千年前から3千年前までの1万3千年間をさす。
縄文人は、男性が身長160センチ弱、女性は150センチ弱。顔は短く、鼻は高く、目は大きく、唇は厚く、そして、耳垢は湿っていた。
平均寿命は40歳くらい。夫婦と子どもたちから成る家族が4件くらい集まって集落をつくっていた。
狩猟では弓矢を使い、犬を一緒にシカとイノシシを狩っていた。
縄文時代が1万3千年のあいだ続いたとして、はじめは数万人だった人口が、中頃には20万人以上にふくれあがったとみられている。
縄文人は、子宝、安産、豊穣、鎮魂など、日常の祈りをこめて土偶をつくっていた。土偶のなかには仮面をつけていたと思われるものもあります。土偶のなかには、有名な遮光器土偶、つまりまるで宇宙服を着ているとしか思えない顔のものもあります。小さな乳房、子を宿したお腹、豊艶を超越した大いなるお尻をもつビーナスには、ただただ圧倒されます。見事な身体曲線差です。
さすがに縄文人の着ていたものは、そのままでは残っていません。でも、編みカゴが現物そのままに残っています。なかにクルミが入っていたカゴです。ヒノキ科の針葉樹の樹皮を見事に編んでつくられています。
小さな石に丸い穴を開ける工法が紹介されています。もちろん鉄はありません。そして硬い石器を使うのでもなく、細い竹や鳥骨にヤスリの役割をする硬砂をつけながら回転させて揉み切りして貫通させるのです。大変な忍耐のいる作業だったことでしょう。 そんなペンダントの原材料になる原石が土器に入って見つかっています。
青森にある三内丸山(さんないまるやま)遺跡に行ってきました。縄文文化に触れて日本の文化を考えてみました。
手にとって一見する価値が多いにある写真集です。
(2018年7月刊。3000円+税)

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