弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年10月18日

シンプルな勉強法

司法

(霧山昴)
著者 河野 玄斗 、 出版  KADOKAWA

いま、東大医学部5年生の著者が、昨年、司法試験に一発合格した、その体験記です。信じられない話ですが、読んでみると、なるほど、とうなづける点も多々ありました。
でも、とでも出来そうもないという違和感を抱いたところも少なくありません。
たとえば、著者は数学を楽しんでいたようです。まあ、そうでしょうね。数学が好きでなければ東大理Ⅲに合格できるはずもありません。
著者は、小学3年生のときに、公文式(くもんしき)で、数学の高校過程をすべて終了していたといいます。独学で、楽しい科目を学年のしばりがなくて好きなだけやれたので、高校3年まで進めたといいます。
ええっ、そんなこと、ありえない、私は、つい叫びそうになりました。
ただ、著者の勉強法はきわめて合理的で明快です。この点は、誰でも実践していいんじゃないかなと思いました。
たとえば、授業を受ける目的は、メリハリを押さえつつ、全体像を把握することにある。予習の時間は最小限にして、残りの時間は復習にまわしたほうがい。一度覚えたものは、なるべく早いうちに反復したほうが、復習時間を短縮できる。脳は、ある情報に何回も接すると、おっ、この情報はきっと重要なんだと思い込むので、反復すればするほど、長期記憶に定着する。
一度教科書を読んだとき、1章分を読み終えたら、もう1回、その章を初めから飛ばし読みするといい。このとき、30秒で、1つの章をおさらいする。1回目にじっくり読んでおけば、その直後だと30秒で全体像を把握できる。
著者は、医師と弁護士の資格をもった医療弁護士になりたいと思って司法試験を目ざしたとのこと、大いに期待します。がんばってください。残念な事件で途中辞任した米山・前新潟県知事も医師・弁護士でしたよね。ときどき、世の中にはそんな人が誕生するのですね。
まあ、それにしても、時給4万円になる将来が約束されているんだから、「なんで、みんな、そんなに勉強しないの?」と問いかけられても困惑します。だって、時給4万円もらえるからって、それを目ざした人生設計(職業選択)って、本当に考えられるものでしょうか・・・。
私には想像もつきません。そんな人が弁護士になってどんな人間関係を築いていくのか、いささかの不安を感じます。それでも大いに知的刺激を受けました。
私も必死で勉強して司法試験になんとか合格しましたが、その苦闘のあとを『小説・司法試験』(花伝社)にまとめています。この本を読んだ人に読み比べていただけたら幸いです。なにしろ、私の本はさっぱり売れず、大量の在庫をかかえて困っているのです。朝日新聞の一面下に広告も出しましたが、反応がちょっとよろしくありません。応援するつもりで私の本も買って読んでください。
(2018年9月刊。1400円+税)

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