弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年5月27日

13・67

中国

(霧山昴)
著者 陳 浩基 、 出版  文芸春秋

妙ちきりんなタイトルの本です。13とは2013年のこと。香港の雨傘革命前夜です。67は1967年、香港で反中ではなく反英暴動が勃発した年です。関係ないけど、私が大学に入った年でもあります。
いわゆる警察小説です。腐敗した警察官を内部にかかえる香港警察のなかにいて、事件の犯人を推理していくところは本格派の推理小説です。したがって、グリコのように一粒が二度おいしい本になっています。
どんな悪事でも、賄賂さえ払えば、警察官は片目をつぶった。非合法の賭場や売春、薬物販売などを警察が捜査・摘発したときも、それは悪を一掃するためではなく、マフィアから金を得るためだった。警察にお金を払えば、期限付き許可証を買ったも同然で、しばらくは警察が邪魔することはないという仕掛けだ。
犯罪者は、買収した捜査員が上司に顔向けできるように刑務所に行ってもよいという仲間を定期的に差し出し、身代わりにする。こうやって暴かれる麻薬取引や賭博行為が実際に行われているものの氷山の一角なのは言うまでもない。
最前線の取締りが出来レースなのだから、警察上層部はまったく目隠しされた状態で治安が悪化しているなど、つゆ知らず、むしろ部下たちががんばって犯人をひとり挙げたと喜ぶ始末だ。警察に入れば、その一員となる、すると、どんな真正直な人間でも、まっすぐ胸をはって生きていくことはできない。
どんなに自分の力を買いかぶった自信家であろうと、いったん「船」を押しとどめようとすると、あっという間にいびられ、爪はじきにされ、警察組織で孤立無援となって、その先に出世のチャンスはない。
あまりに面白くて、車中で夢中になって読みふけってしまいました。
(2017年9月刊。1850円+税)

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