弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年5月23日

治安維持法と共謀罪

司法

(霧山昴)
著者 内田 博文 、 出版  岩波新書

アベ政権は明治150年を手放しで礼賛して、祝賀行事を大々的にしたいようです。
でも、明治維新から終戦まで、日本は繰り返し戦争をしてきました。「平和な国・ニッポン」のブランドは戦後に生まれ、なんとか定着したものです。
アベ政権の言うとおりに戦前に回帰したら、まさしく軍部独裁の暗い、人権無視の政治に変わることでしょう。
治安維持法が制定されたのは、大正14年(1925年)。治安維持令と治安維持法とでは内容が大きく異なっている。治安維持令は、言論等規制である。これに対して治安維持法は結社規制法だった。
治安維持法は1925年(大正14年)4月に公布され、5月より施行された。このとき、治安警察法も存続させる運動を展開した。
東京弁護士会は、1934年(S9年)に臨時総会を開いて、治安維持法の改正に賛成した。
戦時体制がすすむ中で、個人の権利主義は反国家的であるという風潮が強まり、自然に民事裁判は減少していった。刑事裁判についても、被疑者・被告人になったとき、個人の権利主張をしていると、反国家的であるのと同じだとして敵視する風潮が強まった。こうして弁護士の業務は目立って減り、活動範囲が狭まった。
共謀罪法が施行され、国家に異議申立することが事実上抑制されている。
戦前の治安維持法は共産党対策を名目として全面改正され、民主主義運動や自由主義運動、反戦運動の取締りに猛威をふるった。
テロ対策を口実として共謀罪が再び猛威をふるう危険がある。
戦前と現代日本とをリンクさせながら、共謀罪法の恐ろしさを明らかにした新書です。
(2017年12月刊。840円+税)

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