弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年5月 6日

絶景本棚

人間


(霧山昴)
著者 本の雑誌社編集部 、 出版  本の雑誌社

愛読家にとって蔵書の収納場所をいかに確保するか、常に頭を悩ます大問題です。必ずしも世に広く知られた有名人だけではありませんが、本のコレクターとして書斎に何万冊も並べている光景が1冊の写真集になっています。
私も60歳台の前半までは、「本は一冊だって捨てられない」と高言していました。雑誌は捨てても単行本は捨てることができなかったのです。
しかし、60歳台も後半になって一大心境の変化が生まれ、まず、今後もう読むことはないと思う本を書斎から抜き出し、私の関係する団体の事務所に本棚ごと贈呈し、移動させました。それでもまだまだ本はあります。次に、主として警察小説と中心とする推理小説を知人の市会議員の個人事務所にそっくり寄贈しました。推理小説を2度読み返すことは、まずありませんので、読み手のいそうなところに引き取ってもらって、本のリユースを願ったのです。そして今、資料価値がなくなっていて、保存しておくことのないと思った本を大胆に捨てています。
私はこの20年ほど、毎年500冊の単行本を読了しています。買ったけれど読んでいない本が何冊かあります。ちなみに、私は本は買います。読んで光るところは赤エンピツで棒線を引きます。弁護士生活も40年以上となっていますので、私の所有する本は単純に数えても2万冊を下回ることは考えられません。自宅も事務所も本であふれています。
本は段ボールに入れてしまったら終わりです。死蔵ということは使わないことと同義。やはり、背表紙を見えるようにして、すぐにも手に取れるようにしておく必要があります。
この本に出てくる書斎は、本の高さと形に応じて、みんな苦労していることがよく分かります。私の事務所にはスライド式書棚がありますが、これは本の保管としては適さないと考えています。
本は背表紙を読んで、「えっ、こんなところにいたの・・・。」というつぶやきとともに、すぐに手を伸ばして胸にかかえこむべきものです。今度、そのうち買って読もう、なんて考えていても、そんなことはついつい、すぐに忘れ去ってしまいます。今、ここでの出会いを大切にして、フィーリングで購入することを表明して、いい本(いい書斎)にめぐりあえたことを高く評価します。ありがとうございました。
(2018年3月刊。2300円+税)

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