弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年2月26日

シェイクスピアの時代のイギリス生活百科

イギリス


(霧山昴)
著者  イアン・モーティマー 、 出版  河出書房新社

 16世紀の末、エリザベス朝時代のイングランドでは、命のはかなさに胸を衝(つ)かれる。エリザベス自身も何度も暗殺計画は反乱の標的となった。ジェントリーの反乱から、侍医による毒殺未遂まで・・・。このころのことを、ある政府の役人が次のように書いている。
「女王は貧しく、国土は疲弊し、貴族も貧しく、腐敗している。有能な指揮官と兵隊が足りない。何もかも値段が高い。肉の食べすぎ、酒の飲みすぎ、行き過ぎた服装。国内の分裂・・・」
 これは、エリザベスの治世を「黄金時代」とする見方とはかけ離れている。
 しかしながら、エリザベスは、間違いなく、史上最も強大な権力をふるったイギリス人女性である。その宮殿について、訪問したフランス人は、「ヨーロッパで最大、かつ、もっとも醜い宮殿」と評した。
 ロンドン橋は反逆者の首がさらされる場でもあった。腐ったあとも、君主に楯突いた者の運命を忘れさせないため、頭がい骨が杭に刺さったままにされた。16世紀末には、30以上の頭蓋骨が見られた。ロンドン橋は、単なる橋ではなく、ロンドンの象徴にして、王権を宣言する場なのである。
 当時のイングランドの人口は411万人。その前の200年間は、300万人を大きく下回っていた。エリザベス朝の60歳以上は、21世紀の75歳以上に匹敵する。40歳は老年期の入口。50歳まで生きられたら幸運なほうだ。21%の子どもは10歳になる前に亡くなり、そのうち3分の2は、生後1年内に死ぬ。
エリザベス朝の一部の人々は女王のことを快く思っていなかった。カトリック教徒だけでなく、ピューリタンも女王を軽蔑した。エリザベスは、ロンドン市内を練り歩く行進で自分の姿を見せびらかし、大げさな賞賛を求めた。みずからの姿を見せることで、人々の目から見た女王の尊厳とイングランド人らしさを強化しようとした。エリザベスは議会が好きではなかった。実際にイングランドという国を所有し、動かしているのは、ジェントリーと呼ばれる、貴族と農民の中間に位置する階層である。
定住している貧民は大部分が女性で、旅してまわる貧民の4分の3は独身男性である。女性は、結婚していないかぎりで、男性同様に、旅をし、祈り、書き、広く自分の仕事に取り組むことができた。すべての結婚の25%から30%は再婚である。女性がある程度、男性と同等であるといえる唯一の領域は文学である。
エリザベス朝の人々は朝食を食べていた。風呂は、通常、体をきれいにするためではなく、医療を目的として入るものだった。
エリザベス朝で、もっとも一般的な刑罰は罰金刑だった。エセックス州の成人人口4万人のうち1万5000人、つまり3分の1以上が性的犯罪のかどで法廷に立たされている。どうやら人々は盛んに性行為をおこなっており、そのかなりの部分が違法なものだったようだ。
16世紀末、エリザベス時代のイギリスの生活の実際を知ることのできる貴重な百科全書です。
1月末に受けたフランス語技能検定試験(仏検)の口頭試問(準1級)の結果が大型封筒で送られてきました。ということは合格証書が届いたということです。娘から「何枚目?」と尋ねられましたので、即座に「もちろん、ぼくは二枚目」と答えてやりました。本当は7枚目です。2009年から、ほぼ連続して合格しています。とはいっても、まだ十分にフランス語が話せるレベルではありません。なので、毎朝、NHKラジオ講座を聴き、書きとりをし、フレーズの暗誦にチャレンジしています。車中もフランス語のCDを聴いているのですが、それでもまだまだ1級のレベルは遠い彼方にあります。
(2017年6月刊。3800円+税)

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