弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年2月25日

パリのすてきなおじさん

世界(フランス)


(霧山昴)
著者  金井 真紀 、 出版  柏書房

 もう何年もパリには行っていませんが、フランス語を毎日勉強している身としては、またぜひ行きたいところです。
 この本はパリ在住40年という日本人(広岡裕児氏)の案内でパリの各所で出会った男性をイラストつきで紹介しています。さすがプロのイラストレーターだけあって、おじさんたちの肖像がよくとらえられています。このイラストをながめるだけでも楽しい本です。
 パリの女性は服をたくさんもっていないけれどエレガントに装って生きている、そんな本が日本でも売れましたよね。この本には服も靴もほとんど持っていないという男性が登場します。持っているのは長袖シャツ5枚、デニムを5本、黒いスニーカーを4足だけ。スーツを1着持っているが、ほとんど着ることがない。服に求めるのは、目立たない色と実用性。服を選ぶときに、あれこれ迷って悩むのは時間のムダ。2分考えればすむことを、人は大げさに考え過ぎている。人生はシンプルに考えるべき。人生には予想外のことが起きる。そして、限りがある。だからこそ、本質的なことだけに目を向けるべきだ。
その反対に、夫婦ともに弁護士の39歳の男性はお気に入りのスーツは30着、靴も30足もっていて、そのほとんどがオーダーメイド。ローマとミラノにわざわざ服をつくりに行く。
 アフリカのマリから出稼ぎに来ている男性は出身地や共同体で人を一般化したらいけないという。この国の人はこういうタイプ、なんていうのは全部がウソ。本当にそのとおりです。日本人にしても一般的な傾向は言えるとしても、そもそも日本人は裁判が嫌いだなんていうのがウソであるのと同じように、下手な日本論をふりかざすのは認識を間違ってしまうだけです。
パリの演劇人が、どうやって生活しているかという話は興味深いものがあります。フランスのショービジネス業界の失業保険制度で演劇人は暮らしが安定している。映画・演劇・キャバレーなどで働くフリーランスは、前年にはたらいた時間と収入額の証明書を提出すると、それに応じて、次の年に最大6ヶ月分の失業手当が出る。取材を受けた36歳の男性は月1600ユーロの収入があって、なんとか暮らしていけるとのことです。
イラストのうまさに惹きつけられて、あっというまに読み終えてしまいました。人間って、顔も皮膚も違っていても、あまり頭の中は変わらないんだな、そう思わせる本でもありました。平和が一番です。
(2017年12月刊。1600円+税)

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