弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年2月16日

国境なき医師団を見に行く

社会

著者  いとう せいこう  、 出版  講談社

 勇気ある人々ですよね。戦場近くまで出向いて、傷ついている人々を、敵も味方もなく、両方とも無条件で治療するというのです。偉い人たちです。そして、たとえばこの組織に参加するために看護師の資格をとったという女性たちがいます。すごいことですね...。
 日本人の女性も何人も参加しています。ありがたいことです。医師団を支えているのは医師だけではありません。ロジスティクス、つまり建物をつくり、維持し、安全性を確保するといった人々も必要です。危険地帯のなかでも医師団体は丸腰で安全性を確保しているとのこと。それでもテロの巻き添えを喰って亡くなる人も出ています。残念です。
 国境なき医師団を現地で見ておこうとしたとき、出発前に「俺しか知りえない単語」を紙に書いて、封筒に入れ渡すよう求められた。なぜ...。誘拐されたとき、たしかに本人なのかを確認するための仕掛けなのだ。プルーフ・オブ・ライフと呼ばれている。うひゃあ、そういう仕組みがあるのですか、それほど危険な仕事なのですね...。
 MSF(フランス語です。国境なき医師団の略称)の施設に入るには、あらゆる武器が放棄されなければならない。
 建物をつくったり直したり、水を確保すべく工事するロジスティックがいなければ医療は施せない。
ひどい拷問を受けると、不眠やパニック、あるいは発狂する場合もあるので、心理ケア団体には精神科の医師も必要となる。
 難民施設にいると、未来が見えない。子どもたちは、まず勉強がしたい。そして、早く故郷に帰りたいと訴える。
MSFは、政治を変えようとしてここに来ているわけではない。あくまで医療不足を埋める方法を提示するにとどまる。
 ファミリープランニングを訴えるなかで、コントンムの使い方を教えることもある。避妊用インプラントというものがあるそうですね、知りませんでした。
 MSFを聖人君子の集まりみたいに見ないでほしい。なかでは、ビール飲んで、文句たらたら言って、悪態ついて、それでも働いているんだから...。なるほど、ですね。
 たくさんの写真とともにMSFの活動状況の一端が手にとるように分かります。
(2018年1月刊。1850円+税)

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