弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年2月 3日

杉山城の時代

日本史(戦国)


(霧山昴)
著者  西股 総生 、 出版  角川選書

 杉山城って、聞いたこともない城ですよね。でも、これが今注目されている城なんです。なぜか・・・。
 杉山城は、埼玉県比企(ひき)郡嵐山(らんざん)町にある「土の城」。城といっても、城主である殿様以下の武士たちが居住していたものとは、どうやら違うようです。戦国時代の戦闘に備えた砦(とりで)のような城なのです。なぜ、それが注目されているのか、そして、誰が、いつつくった城なのか、少しずつ解き明かしていく本です。
 杉山城は、標高95メートル、比高42メートル。杉山城の特徴は、土橋や虎口(こぐち。出入口)に対して徹底的に横矢を掛けていること。横矢を掛けるための工夫(施設)を横矢掛りと呼ぶ。虎口から堀を渡った対岸に設けられたスペースのことを馬出(うまだし)という。馬出は一般に、城兵が逆襲に転ずる際に攻撃の足がかりとなる場所。これを局限することによって、虎口を一気に突破されないという効果も期待できる。
 杉山城の縄張りは大変に複雑だが、塁壕や通路をランダムに屈曲させた結果ではない。縄張りを構成する各部分は、敵の侵入を効果的に防ぐという観点から、いずれも合理的な説明が可能。したがって、城兵が正常に配置され機能したとしたら、攻城軍は容易には主郭に到達できないだろう。その縄張りは、あまりに緻密で論理的であるから。
 杉山城の発掘調査は、この城が領主の日常生活とも地域支配とも無縁な、純然たる軍事施設であったことを物語っている。戦国時代の比企(ひき)地方には、純然たる軍事施設としての城が次々に築かれていたのだ。
著者は杉山城について、次にように分析しています。杉山城に与えられた任務と守備隊の人数を具体的に意識し、弓・鉄砲をもつ兵を選抜して、ここに3丁、あそこに5丁といったように決められた火点に配置し、鑓(やり)をもった兵たちは白兵戦力として、まとまって使うことを考えていた。杉山城の特徴は、障碍(しょうがい)の主体を徹して横堀に求めていることにある。
 杉山城は2017年に、日本名城100選(続)に選定されたということです。かの忍城(おしじょう)とあわせて、埼玉県には見るべき城がたくさんありますよね。ぜひとも現地に行って縄張りを実感してみたいものです。
(2017年11月刊。1700円+税)

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