弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年12月14日

暮らしのなかのニセ科学

人間


(霧山昴)
著者 左巻健男 、 出版  平凡社新書

 アップルの創業者・スティーヴ・ジョブズがガンのため56歳で亡くなりました。著書は、手術で早期にガンを除去しておくべきだったのに、ニセ科学、ニセ医学にだまされ、手遅れになったと厳しく批判しています。
すい臓がんで早期に発見されたので、早期に手術しておけば生存確率は上がった。しかし、手術を拒否し、絶対薬食主義やコーヒー浣腸などをして手遅れになってしまったというのです。
 なぜ騙されてしまうかという問いより、なぜ騙されない人がいるのか、と考えたほうがより適切だ。人は事実でないことでも、事実のように信じてしまう思考傾向がある。これは、もともと人間の心理システムに組み込まれているのだ・・・。
 体験談のほとんどは信頼性がない。○○○のおかげというのは、ウソか、たまたまそうなったのを信じ込んだだけのこと。
「超能力」の持ち主だと一時もてはやされたサイババも、要するにマジックで、二流のマジシャンに過ぎなかった。
 宿便なるものは存在しない。素人が浣腸すると、腸の粘膜を傷つけたり、危険性は大きい。
標準治療以外の療法は効果が乏しい。
 薬機法(薬事法の名称が変わった)によって、健康食品やサプリには、がんなどの治療効果をうたうことはできない。ところが、サプリは、こんなに効果があったという体験談があふれている。でも、それは全部でっち上げにすぎない。サプリのかたちで多量に摂取するのは、かえって危険が大きい。体験談を真に受けてはいけない。サプリはかえって健康に有害の危険がある。ウコン、グルコサミン、ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタ、コエンザイム・・・。
 日本人の平均寿命は、明治・大正時代は40代。夏目漱石がなくなったのは49歳だったでしたかね・・・。50歳をこえたのは終戦後の1947年。やはり戦争で早死にしていたのですよね。そして、1960年に男性69歳、女性70歳になりました。それが今では、男性は80歳、女性は世界首位の86,8歳まで伸びています。
 もっとも長生きするのは、太り気味の人。やせすぎは短命。太っても死亡率はあがらない。逆に成人したあと体重が5キロもやせると、死亡する危険が1.3~1.4倍も高くなる。
 下手なダイエットはしないほうがよほどいい。
 水素水、磁石を通した水、活性水素水、波動水、マイナスイオン水・・・・。みんな効果は証明されていない。
 EMは、世界救世教がすすめたもの。その有効性は何ら証明されていない。実は、私も何年も前からEMぼかしを利用しています。たしかに生ゴミの悪臭はなくなりました。それで今も利用していて、畑の中に混ぜ込んで久しいのですが、EM効果なるものを実感したことはこれまでまったくありません。まあ、私も騙されやすい人間の一人だなと思ったものでした。
 多くの人に読まれるべき本だと思いました。


(2017年6月刊。800円+税)

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