弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年12月 6日

新聞記者

社会

(霧山昴)
著者 望月衣塑子 、 出版  角川新書

 まさにタイムリーな新書です。時の人が、こんなに早く本を書いて出せると言うのも素晴らしいことです。
 スガ官房長官の記者会見の場での答えに対して、若者はこう迫った。
「きちんとした回答をいただけると思わないので、繰り返し聞いています。すみません、東京新聞です」
 そうなんです。スガ官房長官の、いかにも国民を小馬鹿にした態度・表情で、実(じつ)のある説明をまったくしないのをジャーナリストがそのまま許してはいけないのです。モリカケ事件について、きちっと解明することこそマスコミの責務です。
記者会見が始まってから37分をこえ、その間に著者は23回も質問していた。すごい執念です。ここで残念なのは、その場にいた他の記者からの援護射撃がなかったことです。これでは記者クラブって弊害しかないことになります。
それどころか、「記者クラブの総意」なるもので著者の質問を抑え込もうとしたというに至っては、御用記者の集団なのかと、ついののしりたくなってきます。それでも良かったことは、テレ朝系の「報道ステーション」やネット・メディアで著者の質問光景が流されたことです。
 これを見て、スガ官房長官の言いなりになる記者だけでないと知った国民の多くが著者を励ました。声を上げなくても、まだマスコミも捨てたものではないと思わせたのです。マスコミ各社の大幹部の何人かも直接、著者へ励ましの声をかけたとのこと。いいことですよね・・・。まだまだ日本のマスコミも捨てたものではありません。
 それにしてもアベ首相もスガ官房長官もひどすぎます。カゴイケ氏は既に4ヶ月以上も拘置所に入っているのに、カケ理事長はまだ1回もマスコミの前にあらわれていません。アキエ夫人にいたっては、公衆の面前で面白おかしく話しているのに国会では話そうとしない(夫が話させない)のです。ひどい、信じられない事態が進行中です。これで愛国心教育を学校ですすめようというのですから、政権トップの頭は変になっている、いえ狂っているとしか言いようがありません。
 前川喜平・文科省前事務次官に単独インタビューしたときのことが紹介されています。前川氏は退職後に自主夜間中学で教えるボランティアをやっていますが、改正前の教育基本法の前文を暗記していて、暗唱してくれたというのです。驚きました。この前文は素晴らしい内容です。
「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」
 いまの学校教育は、どんどんこの「前文」からかけ離れていってますよね。ストップをかけましょう。
 著者のますますの活躍を心より願っています。尊敬する大阪の石川元也弁護士から、まだ読んでないのかとお叱りを受けて、あわてて読みました。すっきり、さわやかな読後感の残る本です。一読をおすすめします。

(2017年11月刊。800円+税)

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