弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年11月27日

男が痴漢になる理由

人間

(霧山昴)
著者 斉藤 章佳 、 出版  イースト・プレス

日本で初の「痴漢」について専門的に書かれた本。なるほど、初めてというか、改めて痴漢とは何者かを認識することが出来ました。
痴漢とは学習された行動。なので、その行為は、新たな学習や治療教育で止めることができる。
痴漢行為とは、手など身体の一部を用いて、対象者の衣服の上や身体に直接、かつ意図的に接触する、または密着して執拗に押し付ける行為のこと。
平成28年の1年間に、東京で、強姦は140件、強制わいせつは800件、痴漢は1800件が発生した。
世界的にみて、公共交通機関で日常的に、これだけの数の性暴力が頻発している国は珍しい。これは満員電車が多いということと、国としての対策がとられていないことによる。
日本では痴漢による被害が軽視され、痴漢が野放しになっている。
痴漢をしているのは、四大卒で会社勤めをしている、働きざかりの既婚者男性である。つまり、どこにでもいる、普通すぎるほど普通の男性が痴漢をしている。
何らかの劣等感を抱いていたり、自己肯定感が低かったり、人間関係に対して不器用な人が痴漢をしている。
性暴力の加害者には、加害したことを忘れるという特徴がある。
依存症において「治る」とは言いにくい。回復はする。しかし、完治は困難というが現実。痴漢は行為をやめるだけでなく、男尊女卑的な思考パターンを見直し、女性観や性に対するとらえ方が変わらないかぎり、真に回復したとは言えない。
痴漢は、男性優位社会の産物。常に人との関係で優位性を保てていないと不安定になるパーソナリティーの持ち主が痴漢になる。性犯罪をする人は、心のうちに歪みを隠しもっている。この歪みは、自分ではなかなか気づかないし、まして修正するのは、とても困難。
痴漢は、女性を自分と対等な存在とは見ていない。
性風俗店を利用することが痴漢行為の抑止とはならない。
痴漢行為にはスリルとリスクがともなう。捕まるかもしれないというリスクが高いほどスリルを感じ、達成したら測り知れないほどの興奮に包まれる。そして、それはさらなるリスクを背負って痴漢することへの渇望になる。
痴漢は捕まらないための努力をしている。そのために人生のすべてを捧げている。しかし、最大の努力はターゲット選びにある。派手で勝ち気そうで、頭がよくて仕事ができそうな女性は敬遠する。気が弱そう、おとなしそうという女性をターゲットとする。
痴漢同士がネットで競って自慢しあっている。
痴漢と盗撮は、再犯率がきわめて高い。
謝罪の手紙は意味がない。反省を強いて、その責任を追及すると、むしろ再犯率は上がる。痴漢にとって、反省は現実逃避でしかない。生き方を変えることしかない。グループミーティングの場で本人に気づいてもらう。
痴漢からの脱出・人間性回復の方法まで論じていて、とても勉強になりました。
(2017年8月刊。1400円+税)
天神の映画館でイギリス・ポーランド合作映画「ゴッホ最期の手紙」をみました。驚きました。ゴッホの絵が動くのです。実写アニメって、こういうのを言うのでしょうか・・・。
私はアルルの町に行ったことがあります。「星降る夜」の絵が描かれた場所に立ち、そこで泊まって飲食しました。
ともかく、ゴッホの描いた絵が動き出すありさまは圧巻です。ゴッホの絵に関心のある人には必須の映画として、強くおすすめします。私が行ったとき、満席に近い状態でした。
ゴッホの死に謎があるらしいことも分かりましたが、なんといってもゴッホの絵が動くのに圧倒されます。20人からの画家が協力したとのことで、そのなかには日本人女性画家も含まれています。いい映画は人を感動させてくれますね・・・。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー