弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年11月15日

子ども受容のすすめ

人間

(霧山昴)
著者 関根 正明 、 出版  学陽書房

ながく中学校の教師として生徒に接してきた体験にもとづくものだけに説得力があります。
こちらの気持ちをそのまま受け取ってくれること。それを受容という。器量の大きな人は、とにかくはじめに受容してくれる。こちらの話を最後まで聞いてくれ、その後、自分の感じたことを静かに話す。こちらが話している途中で、話の腰を折ったりせず、はじめは、ともかく受容してくれる。
上手に付きあうことの根本が、この相手を受容することにある。
人間とは不思議な存在である。自分のことでありながら、自分のことがまるで分からない。
人間の成長する過程で、よくやった、えらい、ほう、なかなかうまいね、たいしたものだ、よくやるもんだ、感心だなあ、アタマいいねえ、うまいものだ、そんな言葉を多くかけてもらえた人ほど幸福だ。反対に、なんだ、そのやり方は、何、やってるんだ、へただなあ、もう少しマトモに出来ないのか、何だ、こりゃあ、さっぱり分からんよ、なんて言葉ばかり与えられて育った人は、マイナスの自己概念、潜在意識、潜在観念を植えつけられるので、不幸だ。
受容は、人の心を安定させる。自分の心が安定しているから、相手を受容できる。許容に比べて、受容は大きい。受容が全面的なのに対して、許容は部分的。
子どもは、幼いときには、それなりに親の期待に応えようとする。自分が無理をしても親の期待にそって親を喜ばせようとする。そのとき、子どもは心理的に無理している。しかし、子ども本人は無理しているとは考えていない。
親の情緒不安、穏やかな表情は、子どもにとっての安定感となる。逆に、親の情緒不安定、険しい表情は、子どもにとって落ち着いていられないものになる。
人は、一般に、広く深く世の中のことを知り、いろいろな体験をしていくうちに角がとれ、丸みができてくる。自己受容して自分が情緒的に安定するうえでも重要なこと。そのためには、多くの分野の本を読み、音楽、美術、芸能に親しむこと、多くの人々とつきあう必要がある。
人間は、所属している集団のなかで自分を何らかの形で表現したいという欲求をもっている。これを自己表出欲求という。そして、その集団に自己の存在を認めてもらいたいという欲求をもっている。これを社会的承認欲求という。この二つの基本的欲求が充足されて人間は情緒的に安定する。
実は、この本は25年以上も前の本なのです。書棚の奥に眠っていた積ん読く本をタイトルに惹かれて読んでみたのでした。読んで良かったと思いました。
(1999年3月刊。1359円+税)

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