弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年9月10日

紫式部日記を読み解く

日本史(平安時代)


(霧山昴)
著者 池田 節子 、 出版  臨川書店

「源氏物語」の紫式部より、「枕草子」の清少納言のほうが10歳ほど年長と推測される。「蜻蛉(かげろう)日記」の道綱母は、紫式部より40歳ほど年長である。
「源氏物語」の作者である紫式部とは、いったいどんな女性だったのか・・・。
「紫式部日記」は、紫式部による宮仕え生活の記録。しかし、これは、通説の言うような公的な記録ではなく、第三者的な見聞録にすぎない。
紫式部の娘(大弐三位)は後冷泉天皇の乳母になった。天皇の乳母になることは、中流貴族女性にとって最高の出世である。つまり、紫式部は、女手ひとつで娘を心確かな女性が選ばれる天皇の乳母に育てあげた。
紫式部は、「おっとりした人」のふりをしていたのではないか・・・。
紫式部は21歳で結婚しているが、当時の女性としては結婚が遅かった。
ええーっ、21歳の女性で晩婚とは、信じられません・・・。
紫式部と藤原道長とのあいだに男女関係があったとしても、それは召人の関係にすぎなかった。紫式部は道長の訪問を受けて、うれしかった。悪い気がしなかった。それは、女としてうれしいというだけでなく、道長からサービスされる自分、女房として大切に思われていることへの喜びもあった。
「源氏物語」をもう一度じっくり読み返してみたいと思わせる本でした。
(2017年1月刊。3000円+税)

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