弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年8月 6日

毒々生物の奇妙な進化

生物

(霧山昴)
著者 クリスティー・ウィルコックス 、 出版  文芸春秋

生物の毒を研究している某学者は、26種類の毒ヘビに咬まれ、23回も骨折し、3尾のスティングレイ類と2匹のムカデ、そして1匹のサソリの毒液に触れた。これで、よくも死ななかったものです。私は学者にならなくて良かった・・・。
咬みつく種は、毒液を主に攻撃のために用いる。刺す方の種は防衛のために用いる。もちろん、それぞれ例外はある。サソリやクラゲは、針で刺して餌となる生物を殺すし、スローリスは身を守るために相手を咬む。そして、クモは、しばしば毒液を両方の目的のために使い、必要に応じて攻撃から防衛へと切り替える。
夜行性の毒ヘビに咬まれたときは、比較的痛みが少ないため、その場では大丈夫だと思い込みやすい。そして医師の介護と抗血清がすぐに必要だったと気がつくのは、何時間もたって、徐々に麻痺が進行し、呼吸が困難になってからのこと。そのときには手遅れになっている。
アンボイナガイの致死率は70%。一気に麻痺が進行して、数分のうちに死んでしまう。
毒ヘビに対して、もっとも強い耐性をもつのは、ヘビを日常的に食べる動物たち。ミツアナグマ、マングース、オポッサム、ハリネズミなど・・・。
毒ヘビが毒液をつくることの代謝コストはきわめて大きい。
アメリカで1年間の毒ヘビによる8000件の咬傷事件で、そのほとんどは、ガラガラヘビによるもの。ガラガラヘビは、自分の防御のためしか人間を咬まない。人間は身体が大きいから、すぐに死ぬこともない。
毒々生物というのは、人間にとって毒であると同時に、生命を助ける薬にもなる存在のようです。そこがこの世の面白いところですね・・・。
(2017年6月刊。1600円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー