弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年5月18日

「週刊文春」編集長の仕事術

社会

(霧山昴)
著者 新谷 学 、 出版  ダイヤモンド社

森友学園問題では「週刊文春」には、もっと連続して追及キャンペーンを張ってくれるのかと期待していたのですが、少々アテがはずれてしまいました。まあ、それでも大半マスコミがアベ政権に取りこまれたのか不甲斐ないなかで、週刊誌はまだ健闘していると言えるでしょう・・・。
雑誌は面白くなければいけない。ただ、報じられた側が必要以上にバッシングを受ける時代であることにも留意が必要だ。
週刊誌づくりの原点は「人間への興味」だ。これは、実は、弁護士にとっても言えることなんですよ。人間への興味を喪ったら、あとはお金もうけしか目がない、単なるビジネス弁護士に堕してしまいます。
本当の信頼関係は、直接会わないと生まれない。相手の表情とか仕草、間合い、そういう温度感も含めたのが情報だ。つまり、本当の信頼関係はSNSでは築けない。
こちらがある程度は情報をつかんでいることを明かしたほうがしゃべってくれる人と、「何も知らないから教えてください」という態度でのぞんだほうがうまくいく人と、二通りのひとがいる。官僚は前者で、政治家は後者。情報はギブアンドテイクだ。
学生からすぐ弁護士になった私は、会社に入った経験がありませんので、基本的には後者の立場で、いろいろ教えてもらうようにしています。
どんな組織でも、トップと広報に会ったら、たいていのことは分かる。広報マンがメディア側ではなく、トップばかり気をつかっているような組織は風通しが悪い。広報がトップに対して、ものを言いにくい、独裁的な組織になっていることを意味している。
編集長は、とにかく「明るい」ことが重要。編集長が暗いと編集部が暗くなる。常に明るく、「レッツポジティブ」でなければならない。
相手から見て、「会ったら元気になる」存在でありたい。「あいつ、面白いから」、「あいつと会うと、なんか元気が出るんだよな」、こう言われるのが一番の編集者冥利だ。
肩書きが外れても、人間同士の関係を維持するタイプの人が、その組織のなかで圧倒的に出世している。
あらゆるモノづくりの現場に財務的な発想(これは、もうかるか、採算がとれるか・・・)が入ってくると、とたんにうまくいかなくなる。
週刊文春の部員は56人。事件を追いかける特集班は40人。社員は15人で、残る25人は、1年契約の特派記者。8人ずつ5班で構成する。毎週木曜日に企画会議を開いている。ネタのノルマは1人5本。200本のネタが毎週あつまり、デスク会議で発表される。ネタを出した記者が必ず書く。これが記者のモチベーションを高める。そして、特集を出して、大当たりしたらボーナスをはずむ。
週刊誌記者の苛烈な競争社会の内幕とあわせて、売れる記事をつかむコツも公表されていますので、面白いです。
(2017年4月刊。1400円+税)

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