弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年5月16日

人質司法に挑む弁護

司法

(霧山昴)
著者 東弁期成会明るい刑弁研究会 、 出版  現代人文社

日本の刑事司法は機能不全に陥っていると言われて、久しいものがあります。
その最大の問題が、「人質司法」と言われる安易な身体拘束の常態化である。
勾留請求の却下率は低い。2003年度の勾留請求人数は15万人に近い14万8、333人だった。その勾留請求が却下されたのは536人。なんと0.0036%でしかない。ところが2014年には、2.71%へと上昇した。
保釈が認められたのは、2003年度の被告人7万7071人のうち、保釈されたのは8881人、12%でしかない。ところが、2014年には23.9%にまで伸びた。
判決を受けて釈放された人は3万6052人。実に、起訴された人の半分近くが、無罪(きわめて少ない)、執行猶予、罰金の判決を受けるまで拘束されていたことになる。しかし、これらの人は判決前に身柄拘束から開放されるべきであった。
被告人から弁護人選任届に署名をもらったら、すぐに検察庁へ提出すべき。警察も裁判所も受けとらない。
検察官の接見指定というのが、今も生きていることを知り驚きました。たしかに昔は「面会切符」を検察官にもらいに行くのが大変だったことがありました。ところが、先輩のたたかう弁護士が、「オレは、そんなのもらったことないよ」と豪語しているのを聞いて、私も発奮して、電話指定に切り換えさせました。わざわざ検察庁まで足を運んで、面会切符をありがたくおしいただくなんて、私にとっても屈辱的なものでした。
「捜査の中断による顕著な支障」など、現実には、あるはずもありません。
裁判官による被疑者の勾留質問に弁護士が立会うことを禁止する規定はありません。少年や知的障害のある被疑者に限って弁護人の立会いを認めることがあるようですが、もっと広く認められるべきものです。
保釈保証金は、年々、高額化しています。8年前に平均150万円だったのが、今では200万円ほどになっています。
全弁協の保釈保証書は、保証金額の2%と、自己負担金として保証金額の10%が必要(上限300万円)。私は、まだこの制度を利用したことがありません。
拘置所に被疑者・被告人の身柄が移って困るのは、休日・夜間接見がきわめて困難になってしまうことです。代用監獄として警察留置場に入っているときには、休日・夜間接見が自由自在なのですから、その不便さは大変な苦痛となります。
刑事弁護人となったときに、被告人の主張を裁判所に対して十全に展開することを可能にする丁寧な手引書です。書式もたくさんあって、とても実践的な本ですので、大いに活用したいものです。
(2016年10月刊。2700円+税)
日曜日に梅の実を摘みました。今年は豊作で、大ザル4杯になりました。梅酒を楽しみます。
いま、庭はライドブルーのハナショウブとキショウブが花盛りです。スモークツリーも見頃になってきました。緑濃い庭をながめながら、サンテミリオン(赤ワイン)をいただき、至福のひとときになりました。
ジャガイモ畑の手入れもしましたが、蚊に悩まされるようになりましたが、ヘビの抜け殻も発見し、そちらも気をつけないと思ったことでした。

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