弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年4月16日

ぼくが発達障害だからできたこと

人間

(霧山昴)
著者 市川 拓司 、 出版  朝日新書

世の中には本当に多種多様な人がいるものだと、毎日、痛感しています。私も奇人変人の一人だと自覚していますが、それでも私なんかまだまだ可愛い存在にすぎません。
この本の著者は作家です。私は一冊も読んだことがありませんが、『いま、会いにゆきます』『そのときは彼によろしく』など、私もタイトルだけは聞いて知っています。
アスペルガーであり、ADHD(注意欠陥・多動性障害)をもっています。そんな人がベストセラーになる本を書いているのですから、世の中は不思議です。面白いです。
通常、発達障害者は自分自身について客観的に観察し洞察すること、つまり自己認知ができていないことが多いが、著者はそれを深くしている。きわめて珍しい。
マンツーマンでは会話ができても、三人以上になると会話が混乱して聞きとれなくなってしまうのがAD特有の会話の不得手さ。電話で人と話すこともできない。
ADの人は自分なりの特定の習慣や手順・順番に強いこだわりがあり、臨機応変な対応ができず、変更や変化を極度に嫌う。
また、自分の興味・関心のあること、とくに視覚的な情報を記憶することは得意だが、頭の中で想像することや予測することは苦手とする。
レオナルド・ダヴィンチ、ミケランジェロ、アルバード、アインシュタインもADHDだった。
アーネスト・ヘミングウェイは典型的なADHD.宮沢賢治もADHD・アスペルガー障害を有していた。織田信長も坂本龍馬もADHDだった。
AD、自閉症、ともに遺伝的負因がきわめて強い。AD者は、通常の人より感性が豊かで、美味しいものや心地よい匂いや触感に非常に敏感だ。
この本を読んでいると、この人、とても変わっているよね、そう思われる人ほど、いえ、そんな人こそ、世の中の役に立つ、すごいことをやっているようです。
やっぱり、金子みすずの、みんな違って、みんないい、というのは真理ですね。
(2016年11月刊。780円+税)

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