弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年4月 9日

チア・ダン

社会


(霧山昴)
著者 円山 夢久 、 出版  KADOKAWA

映画は見ていませんが、感動のノンフィクションというオビのフレーズは本当です。
なにしろ、わずか3年で福井県の女子高校生たちがアメリカのチアダンス大会で優勝した実話を紹介しています。その苦労話が実に生き生きと紹介されていて、著者の筆力もたいしたものだと感嘆しました。
前に、このコーナーで長崎の女子高校のブラスバンド部の活躍ぶりを紹介しました。そのときは監督も自ら音楽を演奏していましたが、今回の教師は自分ではチアダンスの経験はないのです。有名コーチをひっぱってきて指導してもらい、チームを育てていきました。その苦労がすさまじいのです。生徒たちと大変な格闘をしていたことがよく分かる描写です。
なぜアメリカで日本の女子高生が優勝できたのか、それはチアダンスの特性による。
日本チームの強みは、なんといっても、チームワーク。振付の難易度は下げてでも、おたがいを尊重・強調して演技する。しっかいりそろった演技を一番の見どころにする。
先日、ネットで日本体育大学の学の集団行進を見せてもらいましたが、大集団が一糸乱れず、さまざまな形になって行進するのには、息もつけないほど感動しました。まさしくそれと同じなんですね・・・。
バレエやダンスなら、個人としての表現力が第一。しかし、チアは、ラインダンスで脚の高さをそろえるとか、全員で同じ動きをするために、必要なら自分を抑えるという協調性が第一の競技。
となると、そのチームワークをいかに築き上げるのか、ということになります。
もちろん技術力の高いコーチが必要ですが、それだけでは十分ではない。そこに監督の指導が求められるわけです。
監督の仕事は孤独である。生徒たちと同じ目標をもってはいても、決して仲間や友だちにはなれない。なーるほど、そうですよね・・・。
この福井商業高校のすごいところは、2009年に全米チアダンス選手権大会で優勝してから、2016年まで実に6回も優勝していること、そして2013年から2016年まで四連覇だというのです。これはすごいことですよね。全米の大会で一回だけ、奇跡が起こったというのではなく、毎年、新しい高校生を迎え入れながらレベルを落とさなかったというわけですから、たとえようもないくらいの賞賛に価します。
夢はかなう。大きな夢をもち、あきらめずに前進し続けば、夢がかなう。この信念を現実のものにした教師、それにこたえた生徒集団に心から声援の拍手を送ります。
ちなみに、このチアダンスのチームJETSを卒業した109人のほとんどがアメリカのステージで輝き、優勝を体験したとのこと。この109人の周囲にはそれを支えてくれる大勢の高校生、そして家族がいるわけです。これまたすごいことです。
こんな地道な努力が日本を支えているのだと思うと、胸が熱くなります。
(2017年1月刊。1400円+税)

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