弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年12月 5日

ライオンは、とてつもなく不味い

生物

(霧山昴)
著者 山形 豪 、 出版  集英社新書ヴィジュアル版

アフリカで育った日本人がいるのですね。そんな野生児は、現代日本社会では住みにくいと感じるのも当然です。その野生児は、大人になってフリーのカメラマンとして、主としてアフリカやインドで野生動物の撮影をしています。
被写体となった野生動物の表情が、みな生き生きとしています。カメラマンに向かって突進寸前のものまでいて、ド迫力満点です。
タイトルは、まさかと思いました。ライオンの肉を食べるなんて、そんなことはありえない。何かのたとえだろうと思っていると、なんと、本当にライオンの干し肉を食べたというのです。
家畜を襲ったライオンは害獣として駆除してよいという法律があり、駆除されたライオンは殺された牛の持ち主に所有権がある。毛皮は売って、肉は干して食用にする。味付けをしていないただの干し肉だったせいもあるかもしれないが、今まで食べたどの肉よりもマズかった。とにかく生臭いうえに、猛烈に筋っぽかった。
人間にとっては牛のような草食動物のほうが美味しいのですよね。肉食動物の肉は一般に人間の口にはあわないようです。
ライオンから人間が襲われる事故は決して多くはない。それは、そもそもライオンは総数4万頭以下と個体数が決して多くはないから。人と接触し、事故が起きる確率が低い。
これに対して、カバによる事故は多い。カバの気性が荒いというだけでなく、水辺を好むカバと人間とは接触する機会が多いからだ。
現実世界の「草食系」動物は、決して優しくもないし、おっとりもしていない猛獣たちなのである。
テントの周囲にライオンやハイエナがうろついていても、テントの中にいて寝込みを襲われたという話は聞いたことがない。テントを破って中身を食おうという気にはならないのだ。
しかし、テントのフラップを開け放して寝ていた人間がハイエナに食べられたというケースはある。
アフリカで食べられないように注意しなくてはいけないのは、ナイルワニ。カバの次に多くの人の命を奪う動物は、ワニである。
しかし、もっとも恐ろしいのは、なんといっても、人間である。他の動物にはない、悪意や物欲というものを持っている。しかも、刃物や銃をもっているので、危険きわまりない。
写真と文章で、しっかりアフリカの野生動物たちの生態を堪能できる新書です。東アフリカの野生動物の写真といえば、小倉寛太郎氏を思い出しました。『沈まぬ太陽』のモデルとなった人物です。小倉氏は大阪の石川元也弁護士の親友でしたので、その関係で一度だけ挨拶しました。大人の風格を感じました。
(2016年8月刊。1300円+税)

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