弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年9月25日

書斎の鍵

社会

(霧山昴)
著者  喜多川 泰 、 出版  現代書林

 本を読む楽しみに満ちた本です。
 読書の習慣をもちましょうというのは、立派な常識人になろうというのではない。むしろ、立派な変人になろうと言っている。つまり、変人のすすめ。
 常識などというのは、誰かがつくり出した空想。「常識人」など、実は、一人としていない。人はすべて、誰とも違う常識をもって生きている。
 弁護士の世界では、お互いに「あんたは奇人、変人やねぇ」と言いあうことが少なくありません。実際、そう言いたくなる人がたくさんいます。もちろん、私も、本人はいたって「常識人」だと思っているのですが、はたからみたら、かなりの奇人・変人の類なのでしょう・・・。
 小説には、いろんな人が出てくる。うれしいこと、悲しいこと、ピンチの連続に勇気や感動。ぐうたらな人もいれば、必死で生きている人もいる。そして、たとえ小説であっても、主人公の生き方に共感できるとき、それは、ただの作り話ではなくなる。生き方の指針にすらなる。自分だって、そうありたいと思えたら、人生を支えてくれる力になる。
 どれほど遺伝的に健康に生まれてきても、生活習慣や思考習慣が悪いと簡単に病気になるし、それでも改善しなければ死に至る。良くも悪くも、私たちの人生は、私たちの手にした習慣の産物と言える。
 よい習慣をもっている人は、人生において良いものをたくさん手に入れることができる。今あるのは才能のおかげというより、習慣のおかげだ。
習慣によってつくり出すべきものは思考だ。心と言ってもいい。人間の思考には、習慣性がある。放っておくと、いつも同じことを考えている。自分に自信がない者は、放っておくと、いつも自分に自信がない方向に物事を考える。悲観的な者は、何かが起こるたびに悲観的に物事を考える。
人間の行動が心に左右される以上、この心の習慣をよくしない限り、よりよい人生になることはない。だから、私たちが身につけるべき習慣は、心を強く、明るく、美しくするための習慣ということになる。
そうした心から生み出される言葉、行動そして結果は生きているあいだ、ずっとその人を幸せにしてくれる。人生に大きな意義を与えてくれる。そして、そんな習慣をもつ人は、自分だけでなく、たくさんの人を幸せにすることができる。
一冊の本に出会ったら、心が楽になることがある。一冊の本に出会ったら、前に進む勇気をもらえることがある。一冊の本に出会ったら、未来が少しだけ明るく見えることがある。
私も、毎日、そんな思いで、ひたすらいい本にめぐりあいたいと期待して本を読み、こうやって書評を書いています。
(2016年1月刊。1400円+税)

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