弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年9月10日

イスラム過激派 二重スパイ

ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  モーテン・ストーム 、 出版  亜紀書房

 デンマーク生まれの白人青年が若いころ非行に走ったあげく、ある日突然回心してアッラーの教えに救いを見出し、イスラム教徒になります。そしてアフリカにまで渡ってイスラム過激派の一員として活動していくのですが、その活動にも疑問を感じて再び回心し、今度は捜査機関に協力するようになるのでした。
初めはデンマークの警察、そしてイギリス、最後はアメリカのCIAまで登場してきます。
一匹狼のような危険人物を逮捕するのには役に立つことでしょうね。でも、ウサマ・ビン・ラディンの暗殺が平和をもたらすはずもなく、もたらさなかったのと同じで、たとえアウラキー人を暗殺したところで、イスラム過激派が消えてなくなるわけではありません。
 アメリカもイギリスもお金のつかい方をまったく間違っている、私はそう思います。何人かのスパイを操作するために何千万も何億円も支出するくらいなら、砂漠の緑化作業をすすめたほうが、よほど効果的なお金のつかい方です。
 ところが、そんな大金は実はCIAをはじめとするスパイの秘密捜査に従事する人々の高額の飲み食いにまで使われているようです。なあんだ、「生命をかけて」過激派とたたかっている振りをして、自分たちも甘い汁を吸っていたのか、、、。だから、びっくりするほど高いお金をかけて要人の暗殺ごっこが止められないのですね。
CIAなどの高官も、 たまに自爆犯人に殺られてしまうことがあるわけですが、これも自分たちが無人機をつかって平気で違法な要人暗殺を次々にやっていることへの仕返しなのです。こんな暴力の連鎖こそ一刻も早く打ち切りたいものです。スパイに頼らない、平和維持活動をみんなで模索したいものですよ。
 500貢もの大作です。二重、三重スパイとして活動していた若者の無事を願わずにはいられません。
(2016年7月刊。2700円+税)

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