弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年8月22日

なぜ蚊は人を襲うのか

生物

(霧山昴)
著者  嘉糠 洋陸 、 出版  岩波科学ライブラリー

 ガーデニングの天敵こそ蚊です。冬のガーデニングは蚊がいないので、防寒に気をつけるだけですみます。ところが夏は、熱中症対策だけでなく、蚊から身を守るための装備を欠かせません。
蚊が人間の血液を吸いとったとき、そのお返しに残すのは、痒みだけではない。望まないお土産として、感染症の原因を体内に送り込む。
蚊は病原体の有力な媒介者である。マラリア、フィラリア症、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱、そしてブラジル・オリンピックで注目されたジカ熱をもたらす。
蚊は、病原体を充塡した注射器が空を飛んでいるようなもの。
平清盛そして、光源氏はマラリアに襲われた。平安時代は比較的温暖だったことから、マラリアがあたりまえの国土病として存在していた。
著者は研究室で蚊を数万匹の単位で飼育しているとのこと。驚異です。
蚊のオスもメスも、自然界では、花の蜜やアブラムシの排出する甘露をエサとしている。ふだんはそれだけで十分に生きられる。ところが、オスの精子を受け入れたメスは、吸血に対する欲求が高まる。これに対して、処女メスは人間の匂いには全然反応しない。メスの蚊は、卵を少しでもたくさんつくるために、血を必要とする。
蚊は、飛行機に乗って移動する。車輪の格納庫に入り込む。そこはマイナス50度の世界なのだが、蚊は10数時間ほどのフライトなら、その環境下でも生きのびる。
蚊は、人間から遠いところではなるべく最短で標的に向かう。近くなるとジグザグに飛行し、匂いや熱の助けを借りて着地点である肌を探す。
蚊に刺されたくなかったら、明るい色の服を着たほうがよい。
蚊は、血をしこたま吸ってしまうと、それで満足する。血の種類には、まったく無頓着である。
1回の産卵サイクルで生み出す卵の数は、ハマダカラで200個、アカイエカは100~150個。そしてネッタイシマカとチカエイカは100個未満。
蚊についての基礎知識をたっぷりいただきました。
クーラーをつかわない生活をしていますので、蚊取り線香に毎晩お世話になっています。
(2016年17月刊。1200円+税)

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