弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年6月26日

蘇我氏

日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 倉本 一宏 、 出版 中公新書 

大化改新によって蘇我氏は滅亡してしまったというイメージが強いのですが、この本は、滅ぼされたのは蘇我氏の本宗(ほんそう)家のみで、中央豪族としての蘇我氏は生き残ったとしています。蘇我氏の氏上(うじのかみ)が、蝦夷・人鹿系から倉麻呂系に移動したにすぎないというのです。
蘇我氏は、わ(倭)国が古代国家への歩みを始めた6世紀から7世紀にかけての歴史において、もっとも大きな足跡を残した氏族である。
蘇我氏を朝鮮半島からの渡来人だとする説があるが、その根拠はなく、現在では完全に否定されている。
蘇我氏は、「文字」を読み書きする技術、鉄の生産技術、大規模灌漑水路工事の技術、乾田、須恵器、錦、馬の飼育の技術など、大陸の新しい文化と技術を伝える渡来人の集団を支配下において組織し、倭王権の実務を管掌することによって政治を主導していった。
推古天皇は、蘇我氏の血を半分ひいており、蘇我氏には強いミウチ意識を抱いていた。また、厩戸王子は、父方からも母方からも完全に蘇我系である。
蘇我馬子は、蘇我系王統、非蘇我系王統の双方と姻威関係を結び、それぞれの後継者をもうけるという、大王家との強固なミウチ関係を築きあげるのに成功した。
壬申の乱において、蘇我氏とその同族氏族は一枚岩ではなかった。
壬申の乱のあと、新しい律令氏族という石川氏としての歩みが始まった。
蘇我氏という同族集団のなかでも一部は生き残っていったなんて知りませんでした。やはり、歴史は知らないことが多いですね。
(2016年2月刊。800円+税)

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