弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年5月28日

日本の食文化史

社会

(霧山昴)
著者  石毛 直道 、 出版  岩波書店

 私が小学生のころ(昭和30年代前半)、わが家の食事は丸いチャブ台に家族全員が向かってとるものでした。イスに座って、ではありません。畳に座って、です。
 チャブ台の語源は定説がないそうです。明治の初めころ、横浜の開港場では、「横浜英語」が話されていた。恐らくピジン・イングリッシュの類でしょうね。そこでは、食事をとることを「ちゃぶちゃぶ」と言った。そして、食堂を「ちゃぶちゃぶや」と表現した。それから、外国人相手の食堂を「チャブ屋」と呼んだ。チャブ屋で使用するダイニング・テーブルをチャブ台と言い、これが、畳の上の食卓をさすことになった。
 うひゃあー、こんな歴史があったのですか・・・。
 いま、我が家はテーブルとイスです。やっぱりイスは便利です。足がしびれることがありません。最近は小料理屋に行くと座席でも堀ごたつ式で、足が伸ばせますよね。畳だと足を投げ出さなくてはいけないので、困ります。
日本料理の盛りつけの美しさは、世界でも知られている。立体的な盛り付け。左右対象形ではなく、食べる者から見て、左が高く、右が低い不等辺三角形の構図とする。
和洋折衷の食器をそろえた日本の台所は、世界で一番食器の種類の多い家庭の台所となっている。
 日本の箸は、中国のそれとは異なり、先端が細く作られているので、ちいさな食物もつまむことができる。日本人の食卓作法で、いちばん重視されるのが、この箸の使い方。食卓における箸の使い方には、さまざまな規則がある。食事作法は「箸にはじまって、箸におわる」とまで言われている。
 弁護士のなかにも、箸をちゃんと使えない人が意外に多くて、驚かされます。これは親の責任ですよね。私は三人の子にしっかり教え込みました。小さいころに何回も訓練させたら、すぐに身につくものです。
 日本には、全国に72万軒の飲食店がある(2006年)。日本は、世界のなかでも高密度に飲食店が分布する国である。そして、全世界に日本食レストランが普及している。
 1980年代のフランスには、日本食レストランは50店。ところが、2011年には1500店。
2006年に、ロシア全土に日本食レストランが500店だった。2010年には、モスクワ市内だけで600店ある。
 マンガ、アニメ、自動車、オートバイ、電気製品とならんで、日本食が「クールジャパン」の一翼を担ってる。
日本の食糧自給率はわずか39%。ところが米だけは95%の自給率。食パンは1%、中華めんは3%、うどん62%、そば11%となっている。
お米はカロリー源、そしてタンパク質の補給源。だから、かつて日本の農民は1日1.5キロの米を食べていた。
 紀元前後の日本の総人口は60万人。それでも、縄文時代の人口の2倍。それが弥生時代に入って、西日本では縄文時代の20倍に増えた。そして、日本人の人口は、明治5年(1872年)に3500万人、大正8年に5500万人になった。
江戸時代には、飲食ガイドブックが発行されていた。1000軒のウナギ料理屋があり、そのうち9軒がおすすめの店として紹介されている。
 いまの私は、肥満気味なので、「糖質制限」をモットーとして、自宅でお米やパンを食べることはありません。もっぱら、おかずのみです。それでも十分に満足しています。
                     (2016年2月刊。3200円+税)

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