弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年4月29日

戦場中毒

社会

(霧山昴)
著者  横田 徹 、 出版  文芸春秋

戦場カメラマンの体験記です。
私には、こんな勇気はとてもありません。危険な、戦場の最前線に出かけて写真をとるのです。まさしく命がけの仕事です。
弁護士も変な人たちから狙われ襲われて命を落とすこともありますが、それは、幸いにしてごくごく例外的なケースです。ところが、戦場カメラマンは、戦場に出かけること時代が命がけです。そして、案内し、安全に誘導してくるはずの現地人に裏切られてしまったら、もうどうしようもありません。
戦場カメラマンになるには・・・。動きまわってばかりでは、集中力が切れ、身の安全も確保できない。めったやたらと動き回らず、まずは周囲の状況を確認する。それから、目の前で起きていることだけを落ち着いて撮る。そんな写真がモノになる。
インターネットとスマートフォンが普及したため、放送・出版業界は根本的な苦境に立たされた。まるで想定外の出来事である。
アメリカにとって、アフガニスタン戦争は、戦死した兵士よりも自殺した兵士のほうが多い。人間の精神は、場所が変わったからといって、電気スイッチのように簡単に切り替えることはできない。
1997年のカンボジア内戦のとき以来、戦場の実情を写真にとってきました。いやはや、まさに日々、生命をかけて写真をとってきたことがよく分かります。私には絶対にできませんが、著者のような人たちがいるおかげで、世間の一断面が居ながらにしてつかめます。ありがたいことです。
(2015年10月刊。1500円+税)

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