弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年4月28日

「仮面の日米同盟」

アメリカ

(霧山昴)
著者  春名 幹男 、 出版  文春新書

 安倍首相は、こう言います。
 日本が集団的自衛権を行使することによって、日米同盟は完全に機能する。そして、抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく。つまり、アメリカ軍は日本を守ってくれているから、日本に平和がある。
果たして、そう言えるものでしょうか・・・。
 日本を防衛するために、アメリカの若者が皿を流したり、命をかけたりするほどの関与をアメリカが約束したなどと、新ガイドラインのどこにも書かれていない。日本が攻撃を受けたとき、真っ先に血を流す可能性が大きいのは、日本防衛に「主たる責任」を追う自衛隊員だ。アメリカ軍は、それを「支援」するだけだし、その「支援」も具体性に欠ける。在日アメリカ軍は日本本土を防衛するために日本に駐留しているわけではない。それは日本自身の責任である。在日アメリカ軍は、韓国、台湾そして東南アジアの戦略的防衛のために駐留している。
 日本国内およびその周辺に配備されたアメリカ軍部隊は、アジアにおけるアメリカの他の防衛公約を満たすのが第一の目的であり、日本防衛のためではない。日本にいるアメリカ軍には、守るための装備はない。攻撃用の装備しかない。そもそも任務(ミッション)が違う。
日本の自衛隊は日本防衛を任務としているが、アメリカ軍は日本の外に出ていくのをミッション(任務)としている。
 日本にあるアメリカ軍の基地は沖縄をふくめて、ほとんどすべてがアメリカ軍の兵站(へいたん)の目的のためにある。アメリカは、日本に対して「嫌だったら、日本から撤退するぞ」と脅してきた。しかし、本当のところアメリカ側には日本から撤退する気は、さらさらない。
 戦後の日米関係において、日本の政権が独自外交路線をとり、アメリカを排除した東アジア共同体のようなグループ形成に動くと、アメリカ政府は、そんな日本の政権を可能な限り相手にせず、徹底的に冷淡な対応をしてきた。そのため民主党・鳩山政権は倒れてしまったのです。
 アメリカは、在日米軍基地を維持するために沖縄返還交渉に応じた。佐藤首相とニクソン大統領の密約の内容は、「沖縄返還時に、アメリカはすべての核兵器を撤去するが、有事の際には、核兵器を沖縄に再び持ち込むことを認める」というもの。これは長く秘密にしてこられた。この点、少なくない日本人が誤解していますよね。日本にいるアメリカ軍は、日本人を助けるために日本にいるって・・・。もちろん、それはまったくの幻想です。
 アメリカとは日本にとって何なのか、なぜ、日本人はこんなにアメリカを「好き」なのでしょうか・・・。その一つに、テレビがあります。テレビでアメリカがいかに優しい国であり、強大な軍事力を持つ国なのか、絶えず見せつけられるなかで、かつての栄光(積極的な)面を示されています。でも、そのアメリカでもサンダース旋風が起きているということは、弱者が目覚めて立ち上がりつつあるということですよね。いつまでたってもアメリカの軍事力に頼っているわけにはいきません。
ご一読をおすすめしたい本です。


(2015年11月刊。800円+税)

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