弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年4月26日

小説 司法修習生

司法

(霧山昴)
著者  霧山 昴 、 出版  花伝社

 お待たせしました。このコーナーの著者が1年がかりで書きすすめていた司法修習生(26期)の前期修習生活がついに本となりました。
 いまの最高裁長官は親子二代、はじめて長官をつとめていますが、司法修習26期生です。その26期修習生の湯島にあった司法研修所での前期修習の4ヶ月間が日記のようにして話が展開していきます。
全国の学園闘争(紛争)を経てきていますので、修習生を迎えた司法研修所はかなり緊張して身構えていた気配です。それでも、その前年の「荒れる終了式」とは違って、平穏裡にスタートします。前年に「荒れた」というのは、まったくの嘘でした。司法研修所は、当日、異例なことにわざわざテレビカメラを導入するなど、謀略的です。
司法研修所では要件事実教育がなされます。白表紙というテキストによって、民事では準備書面や判決文、刑事では弁論要旨、論告そして判決文などを修習生が起案していきます。それを5人の教官が講評するのですが、その講評がシビアなのです。
 青法協会員裁判官の再任が拒否され、24期では裁判官への新任を希望したのに拒否された7人のうち6人が青法協会員でした。青法協に入っていたら、そんな不利益を受けるのです。
司法研修所の教官は任官や任検を必死で勧誘します。そして、青法協には入るなと、口を酸っぱくしてクギを刺すのです。したがって、青法協会員は、そう簡単なことでは増やすことが出来ません。任官希望者は、例外的な修習生をのぞいて、青法協には近寄ろうともしませんでした。それでも、会員のまま裁判官になり、裁判所で冷遇されていた人もいます。
 前期の終わりころに青法協の結成総会を迎えます。25期よりも少しだけ会員が増えるのが期待されていましたが、なかなか伸びませんでした。それでもなんとか、期待にこたえて少しだけ増勢となりました。
堂々440頁もある大部な本ですが、厚さの割には1800円(税は別)という安さなのです。ぜひとも買ってお読みください。そして友人にも教えてやってくださいな。売れないと、困ってしまう人が出るのです。なにとぞよろしくお願いします。
(2016年4月刊。1800円+税)

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