弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年4月23日

吾が青春に悔あり

日本史(戦前)

(霧山昴)
著者  菅野 孝明 、 出版  ふくしま平和のための戦争展実行委員会

 日本軍の兵営のなかで無意味かつ不合理な初年兵へのリンチなどが横行していたことを、絵と文章によって体験を通じて明らかにした貴重な記録集です。
 著者は大正10年(1921年)に福島で生まれ、20歳で受けた徴兵検査では兵隊には不適な丙種合格となりました。
そして、国民徴用令による強制動員で東京の電機工場で働いていました。
ところが、ついに1944年2月に招集令状が来て、朝鮮工兵隊にとられ、翌年(1945年)2月には東京は赤羽工兵隊に転属し、東京大空襲を経験します。復員できたのは、1945年の8月ではなく、同年10月でした。
 初年兵に対する理不尽な上官のリンチの数々はすさまじいものです。ともかく兵隊の命を粗末に扱う帝国軍ですから、もう滅茶苦茶です。牛肉とかセミとか名づけられた拷問に耐えるしかありませんでした。
ところが、いじめるばかりの上等兵を仕返しに闇討ちすることもあったようです。そして、軍内では演芸大会があり、芸達者な兵は、それが我が身を助けます。
ウヨクデーは、兵士たちによる最高のほめ言葉。サヨクデーは、最低という、さげすみの言葉。どこから来た言葉でしょうか。まさか、右翼とか左翼から来ている言葉じゃないでしょうね・・・。
あまりの辛さに脱走兵が出て、それを追いかけにも行きます。
ともかく、この本は、たくさんのイラストがありますので、どうしようもなく不合理な軍隊生活の様子がよく分ります。こんな社会に戻してはいけないと痛感するばかりでした。ぜひ、あなたも手にとってご一読ください。

(2016年1月刊。1800円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー