弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2016年4月 8日
ドキュメント銀行
社会
(霧山昴)
著者 前田 裕之 、 出版 ディスカヴァ―・トゥエンティワン
日銀がマイナス金利を発表したあとに起きた三つの出来事。その一つは、家庭用金庫が急に売れ出して、在庫のないホームセンターが続出したこと。その二は、金貨が売りきれて店頭から姿を消してしまったこと。その三は、デパートの会員券が飛ぶように売れていること。月1万円ずつ支払っていると、1年たったら12万円ではなくて13万円の商品券がもらえるのです。こんな高い金利なんて、今どき考えられません。多くの人が飛びつくのも当然です。ただし、そのデパートでしか買い物できません。したがって、デパート買い物族というレベルの家庭でしか通用しません。
銀行が次々に合併して名前を変えてしまったので、何が何やらわからなくなってしまいました。この本は、銀行の最近の変遷を追って、いったい銀行とは何者なのかを追求しています。庶民にとっての銀行の存在意義は何なのかという視点が弱いように感じましたが、それも日経新聞の記者(編集委員)だから仕方のないことなのでしょうか・・・。
大和銀行ニューヨーク支店で起きた1100億円という、とてつもない巨額な損失事件。これが、たった一人の銀行員がやったことだというのです。私が驚いたのは、それほどの損失を出しても大和銀行は倒産しなかったという事実です。しかも、アメリカ政府から360億円もの罰金が課せられて、すぐに全額を一括で支払ったというのです。いやはや、銀行の超巨額資産には声も出ません。このとき、銀行経営者の責任が法的に追及されたこともないようです。まことに不可思議な銀行世界の闇です。
借主に「誠実で優しい銀行」だという評判は、銀行にとって必ずしもほめ言葉ではない。
多くの国民は、自分は銀行に対する債権者であるという意識をもたず、銀行は現金の保管場所であるという感覚だ。
融資ほどおいしい商売はない。貸出金利と預金金利の利ざやか決まっていれば土日に銀行が休んでいても、安定した金利収入が入ってくる。
銀行(支店)に来て、公共料金の振込をする人は、銀行に収益をもたらす顧客ではない。ATMコーナーを利用するだけの顧客も同じ。顧客の待ち時間をゼロにしても、銀行の評判を良くするかもしれないが、それで銀行の収益が向上するわけではない。かえって余分なコストが発生するかもしれない。
銀行は、妙にプライドの高い人たちの集団である。
かつて日本には大手の信託銀行が7行あった。
金融機関にとって、投資銀行業務は、使いこなすのが難しい危険な武器だ。
銀行同士の合併は、昔から日常茶飯事である。銀行の歴史は、合併の歴史だ。
日本には1901年(明治34年)に2258もの銀行があった。それが、昭和初期(1939年代)には、1500行になった。地方銀行は1945年に53行、戦後それが64行になって、現在も64行のまま。旧相互銀行からの第2地銀は1989年に68行あったのが、現在は41行。
銀行の本質は金融仲介業であり、仲介業務には巨額な利益は必要ない。
相続は地域外への資産の移動を伴うことがある。親が地方、子どもが首都圏に住んでいると、相続資産は地方から首都圏へ移転する可能性が高い。今後10年間で地方の相続資産238兆円のうち、21%の50兆円は、子どもの住む3大都市圏へ移転する。首都圏だけでも10年間に36兆円が流入する。これは、毎年丸ごと1行の地銀が首都圏にやってくるようなものだ。
既存の銀行では、ATMの維持費が手数料収入を上回り、完全な持ち出しになっているところがほとんど。セブン銀行は、ATM業務を進化させ、人件費や物件費をできる限り抑えて運営しているので、収益を確保している。
ゆうちょ銀行の総資産は208兆円(2015年3月末)。総貯金残高は177兆円。貯金残高はピーク時の260兆円に比べると減っている。それでも、ゆうちょ銀行の貯金残高は、3メガバンクそれぞれの預金残高をはるかに上回っている。ゆうちょ銀行は、この巨額資産を有価証券を中心に運用している。その大半が国債だ。
顧客が一番相談してはいけないのが、銀行の窓口だ。というのも、銀行が熱心に販売している投資信託や保険は、銀行に入る販売手数料が大きく、必ずしも顧客の将来の資産形成を真剣に考えているわけではないからだ。
銀行の窓口に相談するのは危険だというのは、税務署と同じですね。いずれにしても、自分のことしか考えていませんから、とんだ火にいる夏の虫ということになりかねません。
日本の銀行の最近の歩み・変遷についての概説本です。勉強になりました。
(2016年2月刊。2400円+税)
庭にアイリスの花が咲きはじめました。黄色と白の気品のある花です。チューリップは雨と風がひどくて、かなり散ってしまいました。でも、まだこれから咲こうというチューリップもいます。
雨が降ったおかげでしょうか、アスパラガスが3本のびていました。店頭に並べて遜色のない太さのもあります。春の味が楽しめます。
先日、家の前の道路をキジが歩いていました。鮮やかな色をしていましたので、オスでしょう。初めてのことで驚きました。