弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年3月21日

ペコロスの母の贈り物

社会

(霧山昴)
著者  岡野 雄一 、 出版  朝日新聞出版

 『週刊朝日』に連載されたペコロスのマンガが本になっています。
 著者は長崎に戻ってタウン誌の編集長になってから、認知症になった母親のエピソードをマンガで紹介しはじめたのでした。
 父親は酒におぼれ、家庭内暴力がひどかったようです。それで、母親は若いころ裸足で家を飛び出して逃げたりしていたのです。
 そんな父親が、認知症になった母親の前にとてもいい感じのお爺ちゃんになって現われるのです。そして、それが息子である著者のトラウマを癒し、リハビリの時間になっていくのでした。
 母親の口癖がいいですね。「生きとかんば!」というのです。生きておきなさい、っていう言葉ですよね。
いろいろ大変なことがあっても、あきらめずに生きていこう。そしたら、いつかきっと、良いことがあるさ、という楽天的な言葉です。
 飲んだくれの暴力父は、実は、若いころにはアララギ派の短歌をよんでいたそうです。斉藤茂吉のあとの土屋文明にケンカを売っていたとのこと。
 著者のマンガは、そこはかとないペーソスを感じさせ、味わい深いものがあります。
(2016年1月刊。1200円+税)

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