弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年2月25日

ナチスの楽園

アメリカ

(霧山昴)
著者  エリック・リヒトブラウ 、 出版  新潮社

 アメリカって異常な国だと前から思っています。トランプの偏狭な思想に熱狂する人々があんなにいるなんて、正気の沙汰ではありません。
 この本は、第二次世界大戦のあと、ヒトラー・ドイツの高官だった連中が次々にアメリカに渡っていき、アメリカは反共の闘士として厚遇していたことを暴いています。
 強制収容所で囚人たちをさんざん苦しめたナチス党の関係者が風に乗ったタンポポの綿毛のように四方八方へと散らばっていった。そして、ヒトラーの手先となって、おぞましい犯罪を重ねていた連中が何千人も、何者にも邪魔されることなく、アメリカへ向かった。
 ナチスの協力者どころかヒトラー親衛隊SSの正式メンバーでさえも「戦時難民」としてアメリカに入国できた。アメリカの入管制度の裏をかいて偲び込むようにしてアメリカ入国を果たした元ナチスは数千人に及んだ。同時に、国防総省(ペンタゴン)やCIAなどの情報機関の高官たちの手引きによって入国した元ナチスが数百人もいた。彼らは、アメリカがソ連という脅威と対決するうえで役に立つと信じられていた。
パットンは、ユダヤ人は動物以下の存在であると高言していた。トルーマン大統領はユダヤ人を自宅に客として迎えることはなく、「ユダヤの餓鬼ども」とか「ユダ公」と言って愚弄していた。かの有名なパットン将軍がユダヤ人を人とも思っていなかったことを本書を読んで知り、がっかりしてしましました。
 元ナチスの連中は、ナチスの犠牲者になりすました。難民あるいは反ナチスのふりをした。イタリアで元ナチスの逃亡者たちを助けたのは、カトリック教会と赤十字だった。
FBIのフーバー長官にとっては、ナチスとしての過去よりも、現在の反共のほうが重要だった。
アメリカの暗い歴史を垣間見る思いがしました。今のトランプにつながる動きなのでしょうね・・・。
(2015年11月刊。2400円+税)

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