弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年1月 7日

動物翻訳家

生物

(霧山昴)
著者  片野 ゆか 、 出版  集英社

 日本の動物園がリニューアルしつつあり、そのなかでの飼育担当者の奮闘ぶりを描いた傑作です。登場する動物は、ペンギン、チンパンジー、アフリカハゲコウそしてキリンです。
 動物園は旭山動物園ではなく、埼玉県こども動物自然公園、日立市かみね動物園、秋吉台自然動物公園サファリランド、そして、京都市動物園です。
 かつて動物園は絶大な人気を集めるスポットの一つだった。ところが、1990年ころ、転機が訪れた。退屈そうな動物の姿を見るのに人々が飽きてしまったのです。入場者が激減して、存続の危機にさらされるのでした。
 ペンギンは、ほとんど絶滅を危惧されている。ところが、日本では、動物園での繁殖に成功し、全国に2600羽のフンボルトペンギンがいて、世界の半数を占めている。
ペンギンは大食い。一日に体重とほぼ同じだけの魚が必要。
 ペンギンは、夫婦とその子どもたちで成り立っている。ペンギンの社会にボスはいない。
ペンギンのクチバシはナイフ並みの切れ味。ペンギンが人間になつくことはないし、またその必要もない。ペンギンは、強く、賢く、環境適応能力の高い動物だ。
ペンギンキャンプ。1人2食付で8000円。定員20人。5月末の土曜日に、テントでペンギンヒルズで一晩を過ごす。午前3時すぎがもっとも面白い。うひゃあ、そんな企画があるのですね。
 チンパンジーは、人間の言葉を確実に理解している。チンパンジーは50年ほど生きる。
ジョーに出演しているチンパンジーの子どもも、5歳か6歳になると人間への反抗心が芽生えてきて、人間による制御が難しくなり、ショーを引退する。
 飼育員は、朝夕、必ずリーダー以下、全員に声かけする。かならず一対一でコミュニケーションをとるのだ。不公平間を与えない。そして、仲間の前で叱ってはいけない。ささいなことでも、ともかく褒める。
 アフリカハゲコウは自分で狩りをする鳥ではない。大空を自由に飛べるようにしたところ、エスケープして、和歌山まで飛んで行った。どうやって連れ戻すのか・・・。すごい忍耐です。
 キリンは、1頭につき1000万円以上もして、海外から譲り受けることが不可能になっている。
 キリンはとくに怖がりの動物。細心の注意が求められえる。
動物園には子どもが大きくなって久しく行っていません。今度、孫が大きくなったら行きたいと思います。大変興味深い話が満載の本でした。
 
       (2015年10月刊。1500円+税)

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