弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年10月22日

集団的自衛権はなぜ違憲なのか

社会


(霧山昴)
著者  木村 草太 、 出版  晶文社

 テレビにもよく登場している若手の憲法学者です。その爽やかな語り口が人気を呼んでいるのでしょう。
安保法制法が自民・公明の安倍政権のものでゴリ押し成立しました。委員会採決など、あっていないのにあったとするゴマカシは見るに耐えないものがあります。日本の民主主義を根本から損なってしまった国会議員は落選させるしかありません。
法の成立は、もちろん大きな出来事だ。しかし、法律は実際に適用されなければ、ただの言葉に過ぎない。憲法違反の法律ができたからといって、政府が直ちに憲法違反の行動をするわけではない。これから大切なのは、国民がしっかりと政府の監視を続けることだ。
政府が憲法に反する自衛隊の活動を実現しようとしたときには、「それは憲法違反ですよ」と政府に毅然と突きつけること、それが立憲主義である。
違憲な法律は無効であって、それにもとづく行動は許されない。
これから安倍政権は、巨大な訴訟リスクを抱え込むことになるだろう。もちろん、判決が出るまでには時間がかかる。しかし、だからといって、タイムラグを利用して、違憲違法な行為をやっていいということにはならない。国内政治は明らかに不安定になるだろう。
自衛隊員のなかにも疑念が生じ、自衛隊の活動の正当性への疑念が高まる。自衛隊の規律は乱れ、関係国にも自衛隊員にも計り知れない迷惑をかけることになるだろう。
そして、憲法も世論も無視して独断で活動する日本政府に対して、国際社会は疑念を生じるはずだ。私も、本当に、そう思いますし、それを心配します。
憲法とは、一言でいえば、国家権力を統制するための法典である。
憲法を燃やすことは、国家を燃やすことである。
立憲主義というのは、結局のところ、まったく異なる価値観・考え方をする人たちが、互いに排除することなく、共存するための工夫である。
今回の解釈改憲を通じて見えてくるのは、単に、「とにかく変えたいんだ」という欲望だけ。改憲が自己目的化している。何かのために改憲するのではない。今の憲法に憎悪のような感情を抱いている。
安保法制法はまだ実施、発動されていません。今のうちに、一刻も早く廃止させましょう。そのためには国会の構成を変えるしかありません。そして、今の小選挙区制という、民意を反映しないイビツな制度をとりあえず元の中選挙区制に戻しましょう。

(2015年9月刊。1300円+税)

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